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電気のついていない暗い部屋。
闇をも感じさせるような暗い部屋。
いつもは感じることのない、恐怖が湧いてくる。
何か不吉な予感がしてユウヒはふとカーテンを開けた。雨が強く降り、木々がしなる程に風も吹いている。夜中である事もあり、交通量は少ない。傘をさすことを諦める若者の姿も見えた。時折雷が鳴り響く。それは、猛獣の低い唸り声のようにどこまでも響き渡る。
暫く何も考えずに眺めていると、小さな明かりと共に、ピロリンという音が鳴った。スマホ画面を見ると、彼女からの通知が一件来ているのが見えた。通知を開くと、「今学校に来てるの。せっかくこんな夜なんだし、夜の学校探検だよ。ユウヒも来て」と書かれていた。ユウヒは雨風の強い夜に外に出たくはなかったが、丁度彼女に言いたいこともあったので、「わかった。二十分くらいで着く」と返信して外着に着替えた。
親も弟も既に寝ていている為、静かにかっぱを探したけれど見つからなかった。仕方なく傘をとる。傘の取っ手部分には虹のキーホルダーが揺れていた。彼女とお揃いで回したカプセルトイのキーホルダー。たった三百円の物だけれどユウヒはずっと大切にしていた。彼女もスクールバッグにつけている。ドアを数センチ開けた時、一気に風が入ってきた。必死に押えながら外に出ると、そこはいつもと雰囲気が違く思えた。何か、何かが違う。十五センチ程の木の枝が風に飛ばされ闇夜に消えてゆく。傘を開かず持ったままゆっくりと歩いていった。
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