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「言わなくても分かるじゃんか」
T字路の分かれ道で、
ブレザーのポケットに手を突っこんで
男の子が口を尖らせて言いました。
白い実が寂しいナンキンハゼの木の枝から、
ヒヨドリが飛びたっていきました。
「言うまで許してあげるもんか」
コートを着た女の子が、
悪戯っぽそうな目で男の子を見上げています。
不意に強い風が吹いて、
女の子のプリーツスカートをはためかせました。
「好きだよ」
男の子がそう囁いて、
二人の頬が真っ赤に染まっていくのを、
ナンキンハゼの木だけが見ていました。
春は、もうすぐです。
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