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新緑のナンキンハゼの木が待つ
T字路の突き当たりに向かって、
学ランを着た男の子が走ってきました。
その後ろを、
肩で切り揃えられた黒髪をなびかせて
セーラー服を着た女の子が追いかけています。
「お前のことなんか好きなもんか」
振り向いてそう怒鳴った男の子は、
女の子が足を止めて
苦しそうに息をついているのを見て、
来た道を引き返しかけました。
女の子はそれを見て、
にっこりと嬉しそうに笑いました。
「絶対好きじゃんか」
「バカ」「ブス」と暴言を吐く
男の子にアッカンベーをして、
女の子は分かれ道を駆け去っていきました。
彼女の後ろ姿を見送る男の子のそばを、
春の風が吹き抜けました。
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