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モンカくんとジャンカちゃん
冬に向かう透きとおった空の下、
一本の木の前で、女の子が足を止めました。
白い綿のような実をつけたその木は、
ハートの形をした色とりどりの葉を
陽の光に透けさせて、
T字路の角に静かに佇んでいました。
女の子は、道の向こうからやってきた
同じ年頃の男の子を呼び止めて、
その木の名前を尋ねました。
「知るもんか」
「威張ることないじゃんか」
笑われた男の子は、ふてくされた顔をして、
女の子から求められるままに
手に持っていたスマートフォンを渡しました。
女の子は、男の子が覗きこむ中、
検索窓に『カラフルな葉っぱ』と入力して
画像検索をかけました。
「それだけの情報で出てくるもんか」
「やってみないと分からないじゃんか」
男の子は、女の子の指が
検索結果を一番下までスクロールしても
答えを得られなかったのを見て、
「ほら見ろ」と憎まれ口を叩きました。
すると、女の子は目に涙を浮かべて、
男の子のことをバシバシと叩きました。
叩かれた男の子は、
慌てたようにスマートフォンを操作して、
その木の名前を見つけてやりました。
それは、『ナンキンハゼ』という名前でした。
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