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「私、フレディー様と仲が良かったんですの?」
翠玉色の目を細め、微笑むマリエッタに僕は照れてしまう。
またマリエッタが僕に笑いかけてくれた! それにフレディー様って……
「まぁ……そんなに……仲良くは……」
何も考えずにボソリと呟きそうになったが、すぐに言葉を飲み込んだ。
バカ正直に「婚約破棄寸前で……」なんて言わなくてもいいのではないか? 今のマリエッタには僕が婚約者である記憶はない。という事は子供の頃のあの失態も覚えてないというわけで……
「仲良くは……?」
首を傾げたマリエッタに僕は声高らかに叫ぶ。
「なかよ…………良すぎて! 周りが羨ましがるくらい仲良くて! お互い好きすぎて!! 一時も離れたくないくらい僕達は好きあってたんだ!」
ふと我に返った僕の顔が火照ってくる。
……何言ってるんだ? 僕は。
熱烈な公開告白をしてしまい、恥ずかしさのあまり固まる僕をちらりと見たアデスト伯爵は、笑いが堪え切れなかったのか肩が小刻みに揺れていた。
「そ、そうですか。そんなに仲が良かったのですね」
「う、うん! そうなんだ!」
ええいっ! もう、なるようになれ! ちょっと事実を捏造しているけどさ。だって、今のこの状態で婚約破棄寸前で……なんて言ってマリエッタを不安にさせる必要はないでしょ!
多少ヤケクソ気味に返事をしながら、頭の中で言い訳を並べる。隣でアデスト伯爵がクククッと笑いを漏らしているのが聞こえ、僕はこの場から早く逃げたくなり、マリエッタに散歩の提案をした。
「そうだ。今から庭園に行こう! よく2人で散歩したからマリエッタも記憶が戻るかもよ?」
「庭園を散歩ですか? 本当に仲が良かったんですね。私達」
うん……子供の頃はね……嘘は、言ってない。嘘は。
マリエッタが嬉しそうにフワッと笑う。あんな微笑みをここ何年も見たことがなく、僕は照れと小さな罪悪感から思わず目を逸らしてしまった。
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