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「で……さ、いつから記憶、戻ってたの?」
マリエッタは視線を外し、じわりと目に涙を溜めた。
「さ……しょ……から」
「えっ?」
「最初から……」
「最初から!?」
衝撃の告白に僕の口がポカンと開いてしまった。
えっ? じゃあ、なに? 記憶喪失自体が嘘だったって事!?
「……なんでそんな嘘ついたの……?」
「だって……」
マリエッタはまた俯き、ボソボソと小声で話し始める。
「私、素直になれないし、意地っ張りだし……とうとうフレディーが婚約破棄了承しちゃって……どうしようって……」
えっ……? あの売り言葉に買い言葉のせい? 僕だって気にしてたんだぞ?
「……マリエッタが婚約破棄する!っていつも騒ぐから……つい僕もカッとなって……」
「ごめ……んな……さい」
あー、なんだ、その……マリエッタ的には婚約破棄するっていうのは僕の事が嫌いだからというわけではなく、意固地になった結果、引くに引けなくなった言動で本当は婚約破棄したくない……と。
ホント、小さい頃から意地っ張りなところ、全然変わらない。
僕が大きく溜息をつくと、マリエッタはまたメソメソ泣き始め、僕は慌てる。
お願いだから泣かないで……周りの目が痛いから。
「素直になれない自分が嫌で、階段から転んだ時、このまま記憶が無くなれば素直でかわいい女の子になれるのに……って思って」
「……なるほど」
マリエッタは泣きながら、頭を下げた。
「ごめんなさい」
「う、うん……わかった。君の家族も心配してたんだから、ちゃんと謝るんだよ」
「……うん」
「……で、マリエッタ……その……僕も謝るよ。記憶喪失のマリエッタに嘘ついた」
僕が頭を下げると、マリエッタは耳まで真っ赤になり、視線を宙に泳がせる。
「あ、う、ううん……私が悪いし……えっと……フレディーはなんであんな嘘ついたの……?」
「えっ……そりゃあ……まぁ、その、マリエッタと仲直りしたかったし……僕はさ……その」
「……うん」
「だからさっ! その……素直なマリエッタも可愛かったけど、生意気なマリエッタも好きって事なわけ! 僕もさ、生意気な女なんてごめんだ……なんて言っちゃったけど、僕が結婚するのはマリエッタしかいないわけで!」
なんか僕の頬は火照ってくるわ、マリエッタは俯いちゃうわ、周りからはヒューヒュー冷やかしが飛んでくるわ。
今気がつく……カフェでわざわざ話すことじゃなかった!
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