三角テントと穴

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今朝の情報番組の特集でDは自分が典型的なタイプA型の人間だということが判明した。 十二ある質問に六つ以上の「ハイ」に心当たりがあると答えるとタイプA型予備軍と格づけされ、八つから十「ハイ」があればタイプA型といわれるものだった。 タイプAまたはタイプBしかなく両方に取柄があるのは承知の事だが、人間、バランスが取れていたほうが上手く生きていけるとDは常に無茶はしないように心がけて二十八年間生きてきただけにショッキングな朝だった。 Dの「ハイ」の数はタイプAの要注意人物に指定される満数の十二個だった。一人暮らしの家で誰にも気を使うことなく、正直に答えた結果だっただけに真実味がある。 普段、几帳面すぎる女性社員の先輩とかを見てじつに醜いと心の中で罵り、反面教師にしていた。モラルを理解し、あまり大袈裟に外れさえしなければ、殻を破るのも一つの生き方だと思っていた。 大学を出てからすぐにやりたい職種にありつけて、ほどほどの出世欲を保ちながら、仕事人間になり過ぎないように適度に遊びもこなしてきた。飲み会を通じて二人の女性と親密な関係になり、それなりに有意義な時間を共有できた。 女らは結婚を望んできたが、減点方式で女選びをしていた為に点数は半年もしない間に地表にこすりつくまでになっていて、将来的な話をされるとDはここぞとばかりに別れ話を切り出した。 結果、同僚や先輩に良くない評価を与えてしまい、Dは出会った一つ下の女と結婚した。程ほどに献身的で金銭感覚も近かった、何より好みな顔で同僚らも狙っていた女だったのはDの評価を上げてくれた。 Dは人生において手に入れたいものをほぼ手に入れた。人生のインフレーションにもデフレーションにもさせまいとびんびんとバランスを測りながら生きている。 Dは自分が偏ったタイプA型で、改善を試みないと周りを巻き込む人間トラブルの種になると言われた。注意報の説明は思い当たる節ばかりで気が滅入った。 現に、妻が妊娠九ヶ月と言う事で実家に出産まで帰っている。Dの妻の母親は仕事もしていないのでこっちに出てきて狭いながらにも一緒に暮らすように勧めていたのだが。
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