三角テントと穴

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Dは利き足の右足を軸に考えていて、木の架け橋から後退したのも右足が軸だった。Dは試しにもう一度左足を振るとそこに別の木の端があるのがわかった。調べれば、右にある橋と同じ幅の木が片足分開けて存在していたのだ。 視界を奪われているためにすぐには気づかなかった。Dはこのテントの巧妙さを感じた。何も考えず、最初に見つけた木の端だけが唯一だと思い、それを慎重に渡っていていき、あまりの緊張から右にバランスを崩したら穴へ落ちて一貫の終わりだったかもしれない。 逆に左にバランスを崩しても予備の木に救われる事もあるという事だ。最初から二つのは木の橋があるのなら、片足ずつ橋に乗せてすり足で渡れば問題なさそうだ。Dは念の為、渡る前に橋の表面を触ってみた。 ブナの気ではなさそうで、加工されていて角ばっていてる。どうやらこの第二の穴の渡り方はすり足歩行なのだろう。その為に丸みを削り。鉋で木の表面を滑りやすくしている。「なんだ、意外といけるじゃないか」 Dは四メートルを越える長さの木の橋を渡りきった。渡っている間は時間が永遠に思えたし、穴から「うっ」「うっ」と不思議な音がしていて気味が悪かった。地球が共鳴しているのを直に聞いたのは初めてだった。 渡りきったところで両膝に手をつけて屈んだ。力を入れたすり足だった為、両腿が痙攣しそうだった。Dはギョッとした。屈んだ姿になった為、顔や手、いわゆる肌が露出している部分が地表に近くなって感じられた地下からの冷気。 Dは試しに右足を前に出し地面が続いているのか確認してみた。 「まじかよっ」といい暗闇の中、頭を振った。だが、集中力が増し始めてきたDは同じ要領で木を探し当てた。 幅四十センチぐらいのブナの木だった。慣れがでてきたので、十分な幅だと信じ躊躇無く渡り始めた。中股で六歩進んだときだった、前に出した左足が空を舞ってバランスを崩した。 とうぜんに真っ直ぐ続いていると思ったブナの木が無くなっていた。前のめりに倒れた。左の手と足が中にぶら下がり、Dは反射的に右手右足で木にしがみ付いた。ブナの木は自然のままの形状を利用しているようで、足場を失ったところから右に曲がっていたのだ。 Dは体勢を取り戻そうと右手で木を抱え込んで、穴に落ちそうな体の左側を持ち上げようと力を入れた。その時だった。「御免よ、あんまりもたもたしてるから」と聴き覚えの無い甲高い男の声がし、Dの上を大きく跨ぎ器用に木の上を歩き去っていった。 あっけにとられたDは体の力が抜けかけ、穴へと吸い込まれそうになったが、気を取り直して、自力で左腕を上げて後は左足を木に上げればいいといった感じだったが、予想以上の体力の消耗と恐怖で体が素直にゆうことを聞かない。 力を振り絞ったその時、左足のパンツの裾をグッと何者かに引っ張られてしまい「おわわわあわあわあっ」と得体の知れない恐怖に悲鳴をあげた。地下生物だっていると信じているDだけに勝手な想像が電光石火で脳内を駆け巡った。
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