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「おいっ俺だ。大声出すな」と聞き覚えのある声がした。
「いいか、そのままでいろ。ちょっと慌てているふりだけでいいからしていろ」入り口でDを助けてくれた男の声。
「落ちたんですか??」とDが驚きを隠せない声で話しかける。
「俺に話しかけるな。確かに俺は下手して落ちてしまったが、あんたがここで転んでくれて助かった。上手くいけば連中を騙せて俺は得点を稼ぐことができる」と言いつつグッグッとさらにDの左足の裾を掴んで穴から這いあがろうとしている。
「いたたた。ちょっと待ってくださいよ。今、手かしますから」
「っし。駄目だ。そこで堪えろ。手を借りたら二人とも失格だ。特に手を貸したほうはやばい事になる。もうすこしだ」と男は言いながら懸垂の要領で体を浮かせ穴の壁を足でけり上げ、片足を蛇の如く木に絡めて瞬時のうちに木に丸まって捕まった。
その間Dは右手右足と左手で二人分の体重を支えたせいで転んで打ちつけた体の痛みを忘れていた。
「ふーっ俺もまだついてるな。これはかなりのポイントアップだな」と男はすでにDの後方で木に立ち上がり衣類の汚れをはらっていた。Dが起き上がるのを待った。
「何だ、スーツを来てんのか?」と驚いたように言った。
「ええ。帰宅途中だったんで。さっきから言ってるポイントってなんなんですか?」
「ん?ああ。そうだな。義理もあるから、この木を渡ったら教えてやる。さあ行こう」と促されてしまい。Dは痛みできしむ体を酷使しながら進んだ。
木はDが転んだ部分から右に曲がり枝分かれしていた。左が太く、右が先細って行っていると男が後ろから教えてくれた。男は木が曲がっているのは察知したのだが右のだんだん細くなっていく枝を渡ってしまった挙句、転落したそうだった。
穴はたいした深さではなく怪我はしなかったそうだった。二人は左の枝を選び無事に木の橋を渡り終えた。男いわく、ここらが第一休憩ポイントらしく余分に地面がある。
テントの繋ぎ目が緩くなっていて、外の空気が入ってくる。つかの間の休息、テントの外では風が吹いているのだろう、テントがブオンブオンと音を立てて呻りを揚げている。気のせいかテントが揺れた一瞬、テントとテントの継ぎ目から外界の光が差し込んだ気がする。がっしかし確かではなかった。
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