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Dは話題づくりのために体を張る事にした。テントを開けてインディアン登場ならば六十点の話題、誰もいないAパターンは、芸術作品があった場合は五十点でイベントに合わせてホームパーティーを開いてみんなで見に来ようと誘うことが出来る。
誰もいないBパターンは全くの無の空間だった場合で30点の話題。ありのままを話すべきで、なれない帰り道で帰ってみたらヘンテコなテント群を見つけたと。最悪なのはホームレスが居た場合で10点。話術次第では大きく化ける事もあろうが、なかなか難しく、様子が変だったDがホームレスのテントにお邪魔しているという終着点になりそうだ。
インディアンを越える何かがあれば楽しそうだが、それが何だったらいいなという皆目が付かない。新手のレストラン?ホテル?学校?そんなものが都会にはあるのは知っている、だがどれも珍しいばかりでその本当の実力を発揮することが出来ていない。インディアンが居たらどうしよ・・・・。
恐る恐る小枝の錠一つを外した。暗闇が現れ、冷気が微かに感じられた。布を全部あけた。中は真っ暗だった。点滅している電灯が明かりをつける時だけわずかに足元が見える。どうやらホテル説から芸術説は無くなりそうだった。
持っていた鞄を胸に抱え一歩前進、そして、もう半歩。入り口から三メートルあたりしか進んでいない。突然、胸を強打して体がゆっくりと右下に落下しているのが感じれた。「わっわっわっ」と驚きの声も上がらない。
直系一メートル弱の何かに乗っていて足を滑らし、前のめりに倒れ、鞄ごと胸を強打し、体の左側がかろうじて何かの上に残っていると判断できた。いよいよ最後の左足も地平から堕ちるっといった瞬間、グググッ工業用の何かで掴まれてそのままの勢いで拾い上げられた。
大事な鞄を離すまいと右手でがっしりと抱えてへたり込むように座る。入り口の布が閉められていて微かな光もなくなっていた。「ったく。あんたみたいのは初めてだよ」と特徴のない男の声がした。
Dはまっさきにインディアンが頭に浮んで喜びそうになったが、同時のタイミングでホームレスもありえるなと、声をかけるのを思い留まった。
「ルール上、テントに入って五メートル以内の穴での救出は認めるってのを始めて実行したよ」と男は言った。
誘い道、迷い道
Dは自分が派手に転んだことは体の痛みで分かるが転倒の原因が分からなかった。暗闇だからといって、二三歩進んだだけで転ぶ理由にはならない。躓いたのだろうかと思って立っている箇所を足を振り何かしらの障害物があったか確認する。
テントの入り口が閉ざされているので全くの暗闇に加えて得体の知れない男となると気味が悪るい。援助されたのはよかったが男からは金銭を要求されるかもしれないと実感している。それがホームレスだろうと、インディアンだろうと。
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