部下に言い寄られる 【進藤課長】

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部下に言い寄られる 【進藤課長】

「課長の事、好きなんですよねぇ」 アルコールで頬を赤く染めた部下の水原(みずはら)ゆいにいきなり言われた。 はっ? と思わず、眉を寄せてテーブルの向こうの卵型の顔立ちの彼女を見ると、ニカッと笑う。 「冗談ですよぉ。あ、本気にしちゃいました?」 ウケると言いながら胸の前で手を叩き出した水原に少しだけ腹が立つ。 アルコールが入った水原がこんなに豹変するとは知らなかった。普段は大人しくて真面目で、冗談の一つも言わないような子だ。そんな彼女が相談があると深刻そうに眉を寄せて俺の所に来た。それで、会社の外で話したいと言われて、水原と2人だけで居酒屋に来た訳だが……。 「課長、次は何にします?」 水原がアルコールメニューを手に取る。 こいつ、まだ飲むつもりか? ビール、カクテル、日本酒と飲んでいるが大丈夫か? 「私はハイボールにしようかな」 「水原、そんなに飲んで大丈夫か? 顔が真っ赤だぞ」 「大丈夫、大丈夫。顔には出ますが、こう見えてお酒は強いんです」 また水原がニカッと笑う。 子どもみたいな幼い笑顔にこっちも頬が緩む。水原がこんなに可愛い笑顔を浮かべる奴だという事も今夜、初めて知った。
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