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01.眠気さえもかき消す
もうすぐクリスマスがやってくる。
クリスマスのオーナメントに飾られた駅から伸びる商店街。はやばやとイルミネーションの輝く家がある住宅街。町はすっかりクリスマスに染まる。雪の白、もみの木の緑、サンタの服の赤……。
奏多の通う学校ではクリスマスソングが歌われ、ますますクリスマスのムードは高まる。
でも、この町にめったに雪は降らない。
なぜならば、ここは南の町だから。
お父さんがいうには数年に一度くらい、早朝に雪が舞うことはあるらしい。でも、この町に雪が積もることはない。朝のうちに雪がほんの少し積もったとしても、朝の太陽が少し高く昇れば、太陽の熱と光にせっかくの雪が溶けてしまうから。
だから小学生の奏多は、この南の町に雪が降るのも積もるのも見たことがない。
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