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「そうだ、面白いこと考えたぞ。せっかくだから雪合戦もしよう」
お父さんは、かき氷器で削った氷の残りをボウルに入れて、ベランダに出て来る。お父さんはボウルの中の氷を手の中で小さく丸めると、その「雪玉」を奏多やお母さんに投げつけ始める。とてもささやかな雪合戦。
指先で丸められた「雪玉」はビー玉くらいの大きさしかない。「雪玉」というよりは、かき氷の氷を指先で丸く固めただけのものだから、「雪合戦」というよりも『ミニかき氷玉合戦』と言えそう。
「冷たい! お父さん、やめてよ!」
それでも、奏多は笑いながら、今度はお父さんにミニかき氷玉をぶつける。「雪玉」がぶつかるたびに、細かな氷が奏多の顔や手を冷たくさせる。夕方の風が吹き抜けると、ますます冷たさが増す。
「ひゃあ、冷たい! 冷たい!」
お母さんもお父さんにミニかき氷を投げつける。そのたびにお父さんは冷たさに我慢できない表情で冷たいと叫ぶ。冷たさを楽しんでいるように笑いながら。それは奏多も同じ。
冷たさが楽しい。これがきっと雪遊びの楽しさかもしれない。
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