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「寒いからお母さんは部屋に戻ろう」
お母さんはベランダからリビングに戻る。お父さんも続く。
「お父さんも寒くてたまらない。奏多も風邪引くといけないから、暗くなる前に部屋に入れよ」
西の空の太陽が傾いたせいで、ベランダの空気を染めるオレンジ色が濃くなった。『かき氷だるま』も夕陽を浴びて、みかんのような色に染まる。
奏多はオレンジ色の空気の中、ミニかき氷玉合戦の余韻に浸る。冷たさは楽しさを連れてくる。冷たさの楽しさ、冬だけの余韻。『かき氷だるま』を見つめ、余韻の中に違和感みたいなものも抱いていることに気づきながら。
ねえ、やっぱりこれは違うよ。
奏多はサッシのガラシ越しにリビングのお父さんとお母さんを見つめながらそう考える。二人がこうして雪遊びをしてくれたのは嬉しいけど。
胸に物足りなさが残るのは、やっぱりこれは雪遊びじゃないから。
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