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「雪遊び? ソリ遊びに雪合戦もできるの?」
『かき氷だるま』は、ぎこちなくうなずく。
「雪だるまだって作れるさ。かき氷じゃなくって、本物の雪でね」
ベッドから起き出した奏多は、たちまち真っ白な雪の世界に自分が立っていることに気づく。しかも、防寒着姿で。
そんな奏多のそばには、奏多の半分くらいの背の高さの『かき氷だるま』も立って、にこにこと奏多を見つめている。
夕方、ベランダで作った『かき氷だるま』よりずっと背が高い。いつのまにか成長したのか? 奏多の背が縮んだのか?
でも、そんな疑問よりもなによりも、奏多は自分が雪の世界に立っていることに驚くばかり。
「ここってもしかして北の町なの?」
奏多は北の町から引っ越してきた友達の凛太郎の話していたことを思い出す。クリスマスの時期には、北の町は雪で真っ白だと凛太郎が言っていたからだ。
奏多が初めて目にする白い雪はすごくまぶしい。太陽の光を一面の雪が白く反射しているから。それでも奏多は目を大きく見開いて、目に映る真っ白な町を眺める。すごく不思議。世界が白いなんて。
「ここは北の町じゃないさ。もっと北にある、雪の世界だよ」
『かき氷だるま』が奏多に微笑みかける。奏多は雪の世界に一歩踏み出す。歩くたびにざくざくっと音がして、足元の雪が沈む。
「本当に雪の世界だ」
奏多は雪をひとすくい。分厚い手袋越しでも真っ白な雪の細やかさがわかる。それに軽くてふわふわしていることも。初めての雪。
「ぼくみたいな『かき氷』とはぜんぜん違うだろう?」
奏多はうなずく。『かき氷だるま』のかき氷よりずっと繊細な雪。
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