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ジャガイモの両目、ニンジンが飛び出した鼻、木炭の口。今にも動きそうな雪だるまは、奏多たちのソリ遊びを見つめる。
奏多と凛太郎はソリのスピード競争中。
雪の斜面では予想以上にスピードが出る。怖いくらいのスピード。それに奏多の顔に当たる風が刃物みたいに冷たいけど、これが雪の世界のスリル。
けれど、雪の斜面を滑る奏多のソリは、地面のこぶみたいなところに乗り上げてしまう。危ない! と思った瞬間、ソリはひっくり返り、雪の斜面に飛び出す奏多の体。一瞬だけ体が宙に浮き、奏多は雪の上に落下してしまう。
「大丈夫?」
凛太郎や他の友達が、自分のソリを放り出して奏多に駆け寄る。
奏多は雪の斜面にうつ伏せ。みんなの視線の中で、奏多はクックックと声を上げる。小刻みに体を震わせて。
我慢できないくらいの痛みだろうかと心配するみんな。
アハハハハハ! アハハハハハ! 奏多は大笑いしながら雪の上に起き上がる。これ以上、大きく口を開けて笑えないし、これ以上笑いすぎてお腹が痛くなったら困る、そんな顔で。
凛太郎もみんなもつられて笑い出す。笑い声が雪の世界にこだまする。
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