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02.冬だけの余韻
それから数日が過ぎ、いよいよ今日はクリスマスイブ。
土曜日だから、お父さんもお母さんも休み。お昼過ぎからはクリスマスの準備に追われている。部屋にクリスマスの飾り付けをしたり、クリスマスディナーの準備をしたり……。
奏多は相変わらず雪に憧れたまま。マンションの窓越しにクリスマスの空を眺める。冬空は透き通るような青い色に染まる。雪の降り出す気配はどこにもない。
雪ってどのくらい冷たいんだろう。雪ってどんなに白いんだろう。奏多はそんなことを毎日、お父さんやお母さんにたずね続けた。
でも、どんなに質問をしても、実際にこの目で雪を見なければ、実際にこの手で雪に触れなければ、雪の白さも冷たさもわからない。
こんなときばかりは、自分が南の町に暮らしていることがうらめしくさえ思える。
リビングにクリスマスの飾り付けをしながら、そんな奏多の姿を見ていたお父さんが、そのとき何かをひらめく。
「面白いことを考えついたぞ」
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