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「天蘭さあああああんん!!!」
夜叉は攻撃をやめて、声のほうを見た。
物置小屋から飛び出してきた蟻塚は、顔中に皺をつくり夜叉を睨みつけている。
「今助けるぞおおおお!!」
彼は両手に持ったチェーンソーを起動させた。
凶悪な刃が回転し始める。
「うおおおおお!!!」
蟻塚はチェーンソーを振り回しながら突撃する。
夜叉は攻撃対象を彼に変えた。
「伐採してやる!!」
蟻塚のチェーンソーは夜叉の刀とかちあった。
火花が飛び散る剣戟だ。
互いに呼応するように武器を振る。
パワーでは夜叉が勝っているが、彼の迫力に押されて思うように殺せない。
自分の身も軽んじて武器を振り回す蟻塚の攻撃に夜叉は後ろに下がった。
「食らえぇぇぇ!!!」
蟻塚はチェーンソーを夜叉の腹に突き立てた。
嫌な音を立てながら回転する刃物は敵の体に侵入する。
流石の夜叉も低い叫び声をあげて苦しんだ。
刀を振り上げられたので、蟻塚は乱暴に蹴って敵を吹っ飛ばした。
痛みに悶える夜叉は腹を押さえながら膝立ちする。
怨嗟に塗れた瞳で、距離を詰めてきた天蘭を捉えた。
敵は向かってくる彼女を迎撃しようと刀を振り上げた。
その軌道を見切った天蘭は、飛び込みざま居合切りを放つ。
夜叉の右腕がポトリと落ちた。
「俺に任せろ!!」
蟻塚を起動しているチェーンソーを思い切り敵に投げつけた。
チェーンソーはまた夜叉の腹に食い込んでダメージを与える。
動きの止まった夜叉に蟻塚は全力疾走で近づいた。
倒れている夜叉を無理やり立たせて抱え込み、ボディスラムをかます。
また無理やり立たせて抱え込んだ。
次は得意のパワーボムだ。
何度も叩きつける餅つきパワーボムが終わり、次は夜叉の体を逆さに持ち上げる。
「死ねこの野郎!!」
高く持ち上げた状態から、勢いよく垂直式DDTで頭から地面に叩きつけた。
夜叉は夜空に響く叫び声をあげた。
体がボロボロと崩れて塵になっていく。
「どうだ!俺たちの勝ちだ!天蘭さんやったぞ!!」
「蟻塚くん危ない!!」
天蘭は目を見開いた。
蟻塚の横腹に鋭い痛みが走る。
「なんだ……?」
勝利したと思い気を抜いた蟻塚の腹に深々と刀が突き刺さっていた。
夜叉はまだ死んでいない。
残った左手で落ちていた刀を拾い、蟻塚を刺したのだ。
夜叉は憤懣に満ちた顔で横に刀を振り抜く。
裂かれた蟻塚の腹から、大量の血液が噴き出した。
「マジかよ……」
数歩ふらついて蟻塚は尻を地面につけた。
駆け寄った天蘭は急いで傷口を手で押さえる。
「やられちゃったなぁ……」
「喋るな!すぐ手当てをしないと……誰か来てくれ!誰か!」
ほかの人間もそれどころではない。
自分たちの戦いで精いっぱいだ。
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