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「我が娘ながら恥ずかしい。私の命令も果たせず、さらには本家を守りきれぬとは……情けない話だ」
「……あんた目ぇ見えてんのか?自分の娘が死にかけてるんだぞ!」
「だからなんだ?教育施設の抜本的な見直しが必要だな。これ以上無能が育ってしまったら敵わない……とりあえず今夜戦いに関わった天蘭家の人間は全員破門だ。役立たずに名乗らす名前はない」
「てめぇ……自分が何言ってるのかわかってんのか?天蘭さんは命を懸けて戦ったんだぞ!!」
「命を懸けて戦うなど誰にでもできる。その女は自分の役目を果たせず、惨めに死にかけている。それだけだ。それがその女の価値だ。役立たずだとこの戦いで証明したのだ……ほかでもない自分自身でな」
「……お前の娘だぞ?」
「子などまた作ればいい」
蟻塚の怒りが爆発した。
もう言葉など何の意味もない。
蟻塚は横腹から漏れ出る血液も気にせず、鷲男を力いっぱい殴りつけた。
大男のパンチに、鷲男は吹き飛ばされる。
「ご当主様!!」
側近が鷲男に近づいた。
蟻塚はドタドタと足音を鳴らし走る。
彼の近くにいる手下たちを放り投げて、鷲男の顔面にさらに殴打を加える。
「やめなさい!!」
側近たちが蟻塚の体を押さえる。
「うるせえぇぇぇ!!!」
蟻塚は獣のような咆哮をあげた後、力任せに手下たちを投げ飛ばした。
それでも手下は必死に鷲男を守るために掴みかかってくる。
霊にはいくら強くても、1人の屈強な男には手も足も出せない。
蟻塚は容赦なく何メートルも成人男性を投げ飛ばす。
「離せ!この野郎ぶちのめさないと気が済まねぇ!!」
「やめなさい!ご当主様になんてことを!!」
「黙れ!!殺してやる!!」
暴れていた蟻塚だが、大怪我に動きを止められた。
うずくまり苦しそうに横腹を押さえる。
「もういい、やめろ」
低い声で鷲男は命令する。
「てめぇ……殺してやる」
「治療はしてやる。怪我が治ったらすぐにこの町から出て行け……2度と本家の敷居を跨ぐことは許さん。麗もな」
「クソ野郎が……」
そう吐き捨てて、蟻塚は気を失った。
天蘭の笑顔を、夢の中で眺め続ける。
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