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「笑うことないだろ、こっちは今どんな状況かとかあんたが誰なのかとか全然分かってないんだから!警戒もするよ!」
「それはそうだね、で?飲まないのかい?」
「毒が入ってるかもしれない」
「殺す気ならベッドに寝かせたりしないよ」
「むっ、それもそうかぁ……」
今の説明を聞いてもコーヒーを口にしようとしない蟻塚のカップを女性は取り上げた。
そしてひと口飲んで、彼に返す。
「美味しいよ?」
蟻塚は顔をしかめながらもコーヒーを啜る。
口の中で甘苦い芳醇が広がる。
コーヒーは美味かった。
「それで?聞きたいことはあるかい?」
「ああ……まあじゃあ……君は誰なんだ?」
「天蘭麗、22歳独身」
「そうか……俺は蟻塚壱、17歳独身だ」
「ご丁寧にありがとう。ほかにはある?」
「え?今の質問の答えってそれだけ?」
「うん、どんどん質問しないと何も分からないよ」
からかうように天蘭は言う。
彼女の態度が気に入らない蟻塚は、ムカつきによって恐怖が少しずつ緩和してきていた。
「俺をどうしてここに連れてきたんだ?」
「呪いを解くためさ」
「は?」
蟻塚の頭はショート寸前だ。
「呪いって……おばけとかの呪い?」
「そうだ」
「俺を馬鹿にしてるだろ?」
「してない、真剣だ」
そう言った天蘭の顔は言葉通り真剣なものに思えた。
蟻塚はため息をついて、彼女から少し離れてベッドに座る。
「俺の握力は140キロある、ベンチプレスは最高320キロだ。襲い掛かっても勝てないぞ」
「そりゃすごいね。君に手を出す気はないよ。負けちゃうから」
「そうか……1からちゃんと説明してくれよ」
「うーん……じゃあ説明してやろうかね。信じないと思うが全て事実だ。いいかい?」
「……うん」
「簡潔に言うと君たちは祠を壊しただろう?そのせいで押さえ込んでいた物の怪の封印が解かれた。で君たちはみんな呪われたわけだ」
「……ん?な、なんだって?」
「だから祠を壊しただろう?それで封印していた物の怪が飛び出てきて、君たちを呪った。だから私たちは君たちを助けようとしている。それで君はここにいるんだよ」
「……え?あれって夢じゃなかったのか?あの夜叉みたいなやつも本物?」
天蘭は顎をしゃくれさせて蟻塚を見つめた。
その眼はどこか咎めているようにも見える。
「面倒なことをしてくれたんだよ、君たちは」
「ま、待ってくれ……それが本当なら……先輩たちは!?先輩たちはどこにいる!?」
「ここにはいない。別の安全な場所で私の仲間が呪いを解いているだろう」
「呪い?なんだそれは!??」
「だから……知ってるだろう君も。負の念で人を傷つけたり、殺したりするんだ。そういった呪いを君たちはかけられているんだよ」
「そんな!なんとかしてくれ!!」
「なんとかしようと思ってるからここに連れてきたんだ」
「じゃ、じゃあ早く呪いをなんとかしてくれ!どうすればいい!?このベッドに寝転がればいいのか!?」
慌てふためく蟻塚を見て、天蘭はため息を吐いた。
「落ち着きなよ、君には呪いはかかってない。だからここにいる」
「はぁ!?さっきから訳の分からないことばかり言わないでくれ!言ってることが全然違うじゃないか!」
「いや……実は私も驚いてるんだよ。あの物の怪の力は絶大だ。君以外の3人はまだ意識を取り戻していないそうだよ。それなのに君はピンピンしてる……さあなぜだか分かるかい?」
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