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「分かるわけないだろ!答えを教えてくれ!」
「ちょっとは自分で考えてみたら?」
「やめてくれ!ただでさえ頭がパンクしそうなのに!生徒に質問して答えを言うまで次に進まない先生じゃないんだぞ!!」
「分かったよ、教えてあげる……単純な話さ、君にはこの世のものではない存在に抗う力があるんだ」
「……なんだ?よくわからないけど……俺に幽霊を跳ねのける才能があるってことなのか?」
「まあ才能と言えば才能だね」
「はっきり言ってくれよ!」
「やかましい男はモテないぞ?」
「モテなくてもいい!どういう意味なんだ!?」
叫び過ぎて蟻塚の喉はすでに痛くなっていた。
「蟻塚くん、君……幽霊の存在を信じるか?」
「はぁ!?」
「これだけははっきり聞かせてくれ。重要なことだ」
あわあわと唇を動かす蟻塚も、冷たく透き通った彼女の質問に口が閉じる。
少しずつ冷静になってきた。
それほどまでに彼女の表情には有無も言わせぬ迫力がある。
「し、信じるよ。今まで幽霊とか見たことなかったけど……俺は見たんだ。あの祠を壊して……恐ろしい……刀を持ったやつが現れた。この世のものではない顔だった……本当に怖かったよ」
「気絶してたもんね」
「しょうがないだろ!怖かったんだから!……まあでも……先輩たちも無事じゃないんだろ?だから……信じるよ」
「そうか、分かった。じゃあ質問の続きだ。人間たちを怖がらせる幽霊が怖がるものってなんだと思う?」
「え?……お盆の日?」
「違う、生命力だ。霊は決して肉体を持つことがない。大半の霊は生きている人間への嫉妬から手当たり次第に襲う。まっそういうのは大したことはないがね。危険なのは1つの目標に突き進んでいるやつだ」
「……あの刀を持った夜叉みたいなやつは……危険なやつなのか?」
「ああ、群を抜いてね」
「どんな目標を持ってるんだ?」
「さあね。恨みか恋慕か怒りか悲しみか……それとも快楽か。分からんよそんなこと、直接聞いたわけじゃない。だがやつは君たちを殺そうとしている。それは確かだ」
「おっかないこと言うなよ……俺肝が小さいんだ」
「知ってる」
「それで……俺は君に守られていればいいのか?」
「それも少し違う」
「じゃあなんなんだ?」
天蘭は微かに微笑んだ。
そして蟻塚の手を握る。
「君、私と一緒に幽霊退治をしないか?」
「……は?」
思考停止とはこのことだろうと蟻塚は思った。
彼女は何を言っているのだろうか?
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