鈍色

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
この数日、どんな景色を見たんだったかなと考えても、窓から覗いた太陽の隠れた空くらいしか探し出せない。 今日も窓を開けると、水分を摂りすぎた風がたぷんたぷんと気だるそうに、微かな潮の匂いを届けてくれたのだけれど、あいにく今は何も言葉にする気分じゃなくてね…… と、声にする代わりに窓を閉めた。 何もかもが濡れているかのような景色が拡がっているのに、ぼくが発する言葉はたぶん、ギスギスと渇ききっているのだろうな。 言葉を放ったその先に君がいたのなら、知らずと傷つけてしまったかも。 声を可視化して、空の下に差し出したなら、 雨に打たれて多少は言葉も潤うのかな。 そんな言葉を君に投げることができたなら、 きっと君は、返してくれるのだろうね。 そう想うことで なんとか均衡が保てた気がした 今のぼくの にびいろのこころの
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!