叶わぬ賭け

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そんな問いを投げたのは、君との絆を増やしたかった僕の心細さのせいなのでしょうね。 もうこうやって、部屋の窓から外を眺めるのは何回目になるだろうか。 眼下には断崖を打つ白の波紋が、紺碧のカンバスに無双の線を描いては、また消える。 ……どうかしてるな。 三杯目の紅茶に手を伸ばしながら、自身の不甲斐なさに頭を掻いた。 机の上には書きかけの恋文(ラブレター)。 ……今日も、書けず終いか。 知らずとまた(みぎわ)に目を移すのは、君からの便(メール)りを待つ儚さからでしょうか。 あの日君に投げた問いの答えは、今頃ボトルメッセージのように、波の上を揺蕩っているのでしょうか。 ……それとも。 蒼穹に目をやると、いつのまにやら番いの鴎が、睦まじくランデブーを楽しんでいた。 あぁ、分かっているさ 叶わぬ賭けでもあるまい。 来たっ。 鼓膜には、潮騒の代わりに鐘の音が響いた。 脳裏に浮かぶのは、 波にあずけたボトルメッセージを拾う君の細い指先。そして…… 寄せる波に濡れた紺青(プルシアンブルー)のハイヒール。 ねぇ君。君は何がほしい? そう尋ねたのはさ…… 蒼空(そら)碧海(うみ)。 視える景色は違っても、そこには確かに繋がる言葉がある。 瞼をとじた僕は、それに応えるように文字を並べた。 君と過ごした時間。 これから過ごすであろう時間を。
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