ムスタング

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ムスタング

 マスカレードパーティに赴く途中酒に酔うように迷子になった。何かに沿っていればと思い、蔦を下り雫を飲みヤスデの橋を渡った。自切した蜥蜴の尾っぽを土産に右手に持って歩いたがとうとう何も見つからない。何も見つからないので仮面をつけて線路に沿った。早いも遅いも無く右も左も分からない、きっと廃線となったものだから。仮面をつけているので星も見えない、落としたパンプスの位置も覚えられない、ドレスの汚れも気にならない。鮮血滴る蜥蜴の尾があるので乾きも飢えも気にならない。  あるく、あるく、スキップをしたら朝陽が昇る。ひらめく、ひらめく、異なる色の旗が空に幟る。うしなう、うしなう、わたしはわたしを見捨ててあげる。午後のお仕事、もうぐっばい。バーバヤガのお相手、さらばかな。  わたしのうちには辿り着かない。
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