14人が本棚に入れています
本棚に追加
「瓶詰め怪物」
きっと誰の胸のうちにも、そいつはいて。
生まれつき、色んな種類の色んな性質のやつが、自分と一緒に育っていく。
首輪やリードをつけたり。
躾が上手く行ったり。
たまたま、大人しいコだったり。
中には全然気配のないのもいたりして。
そいつは、飼ってる子供の「性格」に影響を与えたり、与えなかったり様々で。
ひた隠しにできる子供もいるけど。
そいつの方が、強く外に出てきてしまう子供もいる。
環境や、関わる人間とのやりとりで、コロっと可愛らしく懐くこともある。
逆に、酷く醜悪で、怒りや哀しみや憎しみだけの、腹をすかせた狂暴なやつにもなる。
そんなの、手に負えない。
私が飼っていたのは、後者だった。
だから、まるでそんなおまえも受け入れるよ、って優しくて慈愛に満ちた顔をして。
お腹をいっぱいにしてあげる、と微笑んで。
両腕を広げて、寒いでしょう、抱いているわ、さあおいで、と、ゆっくり近寄った。
私は、そいつが警戒心をといて、胸に飛び込んで来る瞬間に。
ずっと凍りついていた、心の氷を割って継ぎ接ぎだらけで作り上げた瓶の入り口を。
サッと用意して、閉じ込めた。
そんなモノは、本当だったら易々と壊せたはずなのに。
私の怪物は信じたの。
ここがあたたかな私の胸の中で。
受け入れられたと、存在を許されたと。
それから、クーン、と一鳴きして。
体を丸めて冬眠してしまった。
私の怪物は、信じたの。
ごめんなさい。
思い出すまでに、ずいぶんと時間がかかってしまったわ。
あなたは、愛しい私の怪物。
あんなにも、私と共に成長したいと。
そう願っていたのにね。
仲良しだったり。
守ってくれたり、
敵を追い払ってくれた時もあった。
どんな時も、私を愛してくれたのに。
戦いの時。
今更、なんて都合が良いのだろうと。
さすがに顔向け出来ないと。
そうも思った。
でも、おまえが必要だったよ。
私は、かたく閉ざした瓶の蓋を開けた。
忘れ物、失くした感情。
取り戻せたから、私は、勝てた。
大好きよ、大切な、私の中の最高のタイガー。
最初のコメントを投稿しよう!