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エレベーターを降りればフロントスタッフが私に気づきカウンターから出ようとしているのがわかったけど、気づかないフリをしてホテルを出た。
車寄せの屋根から一歩踏み出せば強い日差しが照りつけた。
去り際にどうして彩愛を戻すヒントのような事を言ったのか、自分でもわからず自然と足早になる。
藤乃井蒼士の顔を思い浮かべれば、それは彩愛を愛してると言った真剣な表情だった。
『『ドクン。』』
急に大きく脈を打った胸を押さえて立ち止まる。
何……?
今、鼓動が重なったような………
彩愛が反応しているとでも言うのだろうか。
『『ドクン…ドクン…』』
続けざまの大きな鼓動に、立っていられなくなりその場にしゃがみ込む。
何!?本当に彩愛だというの!?
私はまだ私を忘れるつもりはないわよ!
体の奥から感じる得体のしれない感覚に恐怖した。
とにかく息を整えようと大きく息を吸うと、ふと刺すような日差しが遮られた。
振り返り見上げた先には藤乃井蒼士の顔があった。
『『ドックン。』』
ひときわ大きく跳ねた鼓動に整いかけた息を詰め、視界がぼやけていった。
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