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「知っている人は知っていると思いますが」
ここで一旦、カトウは咳払いした。
「彼は、この日を迎えることなく二年前に亡くなりました」
総勢百数十人を超える元生徒とその元担任教師だった者が居合わせていたが、誰一人として微動だにしなかった。
僕も驚きのあまり、息を飲むことくらいしかできなかった。
てっきりこの会場のどこかにいるか、成人式なんてあほくさいと言って、当時の仲間と車に乗ってどこかで遊んでいるのだと思っていた。
僕は中学を卒業してから、元同級生らとはほとんど接点がなかったこともあり、こういう話を耳にする機会は皆無だった。
カトウは彼の死因について触れなかったが、ユウヤが二十歳を迎える、とうの前からこの世にいなかったことを知らずにいるよりはよかった。
心底から、そう思った。
やんちゃ者だった彼のことだから、夜間道の真ん中を歩いて車にはねられたか、悪ふざけで橋から転落したか。あるいは売られたケンカを買ったばかりに刺されてしまったか。おそらく、その辺りだろう。
ユウヤが静かに、きれいに死んだとは、とてもではないが僕には想像がつかない。
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