お屋敷でのリオ

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お屋敷でのリオ

 話は変わってリオの様子を覗いてみよう。  リオが妹たちとお屋敷に来てから10日ほどが過ぎていた。  リオはお屋敷に慣れる3~4日の間は妹たちと一緒にいたが、それからは朝ごはんを旦那様や奥様、妹たちと一緒に食べると、毎日家庭教師が来て、お昼まではお勉強をした。  お昼の後は旦那様の執事に付いて歩いては、執事のしていることをよく見てしっかりと覚えようとした。  リオの場合はフットマン(男のお手伝いさん)にまで、妹たちのように無条件で可愛がってもらうという訳にはいかなかった。  旦那様の執事は旦那様のお気持ちもよくわかっていたので、リオにしっかりと執事の仕事を教え、それがひいては旦那様の後を継ぐ助けになることを念頭に置いて面倒を見ていた。  ただ、事情を知らないお屋敷のフットマン達は、自分たちが大きなお屋敷で立派にフットマンの役割を果せばその上に立つ執事に慣れることを知っていた。  それに、フットマンはお台所やお部屋のお世話をするメイドさんとは違って、必ずどのお屋敷にいるわけでもなかった。  とても裕福なお屋敷にだけ、旦那様の身分が上級であることの証明の為に雇われていたので、普段の仕事は銀の食器磨きや旦那様が外出するときのお付きとして、見栄えの良い背の高いものだけがなれる仕事だった。  そんなふうに大きなお屋敷でプライドを持って働いていたフットマン達は、何故リオのような見知らぬガリガリの子供が銀器磨きもせずに、いきなり執事に付いて勉強しているのかとても不思議だったし、不満でもあった。  執事が近くにいない時に廊下ですれ違おうものなら、足をかけたり、酷いときには転んだ後に蹴ったりする者までいた。目立たないように洋服に隠れている所だけを狙って。  リオは泣き言は言わなかった。それにお食事の時には仕事の格好は着替えているので、旦那様や奥様も気づくことはなかった。  しかし、ある日執事がその現場を目撃してしまった事で、リオは執事に問い詰められ、これまでにもこんなことがあったのかを話さざるをえなかった。  執事は旦那様には言いつけないと言う約束でリオからこれまでの事を聞きだしたので、執事が直接フットマンの中でもリオに乱暴を働いたものを呼び出し、厳重に注意をした。  そして、リオは執事にはならないのだから目の敵にしなくても良いという事を告げ、今後こんなことがあったら次は旦那様に報告すると付け足すことも忘れなかった。  リオはやっと嫌がらせを受けることもなく、食事も沢山とれるようになってきて、ようやく8歳の誕生日を迎える頃には頬も少年らしくふっくらしてきて、最初に用意した執事の勉強用のシャツなどがきつくなるくらいだった。  その間にしっかりと執事の眼を通しての旦那様のお仕事を理解し、勉強にも、旦那様のお仕事を継承できるように難しい科目も加わった。  リオは勉強でも泣き言は言わなかった。とにかく旦那様と奥様のご恩に報いたいと常に思っていたので、旦那様たちに言われたことには何でも死に物狂いで取り組んだ。  毎日おいしい時間を日に3度過ごし、楽しい日々はあっという間に過ぎて行った。  リオとその妹たちがお屋敷でお世話になるようになってから5年が経った。    
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