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社交界へ
リオは無事にプレップスクールを飛び級で卒業してみんなが大学に入る18歳よりも早く16歳で大学入学を許可された。
大学にはお屋敷から通うことになるので、また妹たちと一緒においしい時間をすごし、楽しい食卓で食事をすることができた。
寮での食事はお屋敷ほど豪華ではなかったが、そんなことはリオは不満には思わなかった。ただみんな黙って食事をする決まりだったので、リオにはとても味気ない食事に思えたのだった。
そんなこともあって、早く卒業したいと思い、学業に精を出し、飛び級してまでお屋敷に戻ってきたのだった。
アネッサは14歳。大きなおやしきで開く小さいパーティーで社交界デビューをすることになった。
すっきりと身長も伸びたアネッサは裾まである長いドレスを綺麗に着こなして、申し分なくバランスのよいスタイルに成長した。
お屋敷にきてからは少し癖のある金髪を切ることなく伸ばしていたので、今では好きな髪型に結えることができた。
奥様付きのメイドさんの一人がそのまま14歳のアネッサ、12歳のアニー、10歳のアンナのナニーとしてお世話をしていたが、アネッサが社交界に出るとなると人手が足りなくなるので、奥様はお屋敷の中でも若くて気の利く、優しいメイドさんを一人アネッサ専用につけてくれた。
アネッサは最初の頃こそ遠慮がちであったが、色々なことを奥様に教わるうちに、奥様の本当の優しさを受け、自信を持ち、奥様の教えや親切を素直に受けるようになった。そうして、刺繍やピアノを教わったのち、ダンスやマナーの先生に付いていろいろ教えてもらう間に本当のレディになれたようだった。
ただ、アネッサは貧しかった時の事も全部は忘れることができずに、今の自分があるのは旦那様と奥様のおかげだという事をいつも忘れずにいるので、同じ14歳の少女たちよりも大人びて、考えも思慮深いのだった。
アニーとアンナは少々わがままも言うようになったが、わがままが言えるほど元気になってくれたことが、奥様や、奥様付きのメイドさん達はむしろ嬉しくて、きちんと躾をする一方で、大人だけで目を合わせて静かに微笑みあうのだった。
いずれ、アニーもアンナも社交界にデビューすることになる。
アンナがデビューするころには、リオも旦那様のお仕事を大分手伝えるようになるだろうし、リオ自身も社交界で他のお屋敷のパーティーに旦那様、いや、お父様と一緒に行ったりする日が来る。
貧しい頃でも、おいしい時間を楽しく過ごすことを知っていたリオは、今は本当に恵まれた食事の内容でおいしい時間を過ごせることに感謝している。
そして、さみしい時間をすごし、お食事も豪華だったのに楽しめなかったお父様とお母様にいつでも楽しく過ごしていただけるように、感謝と尊敬の念をもって過ごしている。
お食事の時間はおいしい時間。誰一人不機嫌になったりしないおいしい時間を過ごすことがとても貴重なのだという事をこの大きなお屋敷の家族は良く知っているのだから。
【了】
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