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大きなお屋敷で
リオはこのところ食事を貰っていた玄関ではなく、前のように大きなお屋敷のお台所に向かった。今まで連れて行っていない他の二人の妹も連れて。
やはり奥様に直接お願いするのはためらわれてしまったのだ。
しかし、リオは間違っていた。食堂の優しいお姉さんはただのメイドさんだという事。奥様に聞かないと何も決めることはできないという事。
そして、話は聞いてもらえたものの、お台所のメイドさんのお姉さんに、お姉さんでは決められないので、結局、玄関に廻って奥様に話すように言われた。
奥様はいつもの場所に座っていた。
リオは、玄関から奥様のいるリビングを眺めながら、母親が死んでしまった事。自分が仕事をしてくる間、下の二人の妹を預かってほしい事をお願いした。
夕方になったら引き取りに来るから。それまでの間せめて家の隅にでも置いておいてほしいと頼んだ。
二人の妹はこれまでの厳しい生活のせいで痩せこけて、子供らしくはしゃぎまわることもなかったので静かにしているという事も言い忘れなかった。
その日は奥様のお友達は来ていなくて、奥様と、珍しく旦那様が家にいた。
リオは、旦那様までいると思わなかったので、大層ビクビクしながら自分のお願いを勇気を出していってみた。
旦那様は、奥様が最近色々な浮浪児や困っている子供に施しを敷いているのは知っていたし、それが社交界でも良いことをしていると話題に上るようになっていたが、自分の知らない所で行われていたことだったので、事情を奥様に聞いていたところだった。
旦那様も奥様のおなかの中で子供が亡くなってしまったことをとても残念に思っていたし、哀しそうな奥様の顔を見るとなんと声をかけたらよいのか分からなかったので、ずっと社交界の付き合いだと言って、そうでない日も外食ばかりして家に戻っていなかったのだ。
ただ、奥様が外の子供達に施しをして元気が出るのだったらこれからもどんどんあげるようにと言っていたのだった。
そして、奥様がどんなに寂しかったかも奥様の口からその時に旦那様に告げ、旦那様はこれからはなるべく一緒に食卓を囲もうと約束をしたところだった。
奥様は旦那様も自分と一緒に悲しんでいてくれた事、貧しい子供達への思いやりが旦那様にもある事を聞いて、大層嬉しくなった。
食べ物がない子供への施しは元々自分が勝手にしていたことだったが、旦那様に認めてもらったのでこれからは堂々と施しができる。と胸に手を置いていた時だったのだ。
そのタイミングでリオに小さな妹二人を預かってくれと言われた。
旦那様と奥様は顔を見合わせた。
施しをするのと、子供を預かるのは訳が違う。
少し旦那様と相談をするので、その間、お台所で食べるものを貰って食べているようにリオに言いつけた。
お台所のお姉さんのメイドさんには、全員にミルクをたくさん飲ませることと、アンナ以外の子供達にはたっぷりのスープとパン、賄いで良いので何か調理した肉か魚を食べさせるよう言いつけた。
リオはお台所に妹たちと一緒に連れていかれ、奥様が言った通り、沢山のミルクと、食べ物も沢山食べさせてもらった。
1歳の妹のアンナには主に温めたミルクが沢山与えられ、野菜を裏ごししたスープも飲ませてもらった。
元々あまり沢山の食べ物を食べたことがなかったので、4人ともすぐにお腹がいっぱいになってしまい、台所とはいえ、こんなに暖かい部屋で食事をしたことがなかったので、眠気が襲ってきた。
1歳のアンナと3歳のアニーはお腹がいっぱいになるとすぐに眠ってしまったが、5歳のアネッサとリオは眠ってしまっては失礼だと思い、眠気を一生懸命我慢した。しかしやがて二人とも力尽きて椅子からずり落ちそうになり眠ってしまった。
お台所の優しいメイドさんのお姉さんたちはリオとアネッサ、それに小さなアニーとアンナを、お台所にあったのジャガイモ袋を厚めに敷いてストーブの近くに寄せ、そこに寝かせた。
母親が亡くなってお葬式をあげて、小さな妹たちを抱えて家も追い出され、外で一晩を過ごした経験はリオと5歳の妹のアネッサを疲弊させていた。
やがて奥様がリオを呼んでくるように自分付きのメイドさんに言いつけ、メイドさんはリオを台所まで迎えに行った。
そこで、疲れ切って眠っているリオを見たメイドさんは起こすのも可愛そうに思い、奥様にみんなが眠ってしまっている様子を伝えに言った。
奥様は旦那様を一緒に台所まで様子を見に来た。
台所では旦那様や奥様が台所に来ることなどない事なので大層驚き、日頃自分たちが十分に台所を掃除していたか気になってソワソワしてしまった。
もちろん、このお屋敷の台所は間違いなく隅々まで綺麗になっていたのだけれど・・・
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