旦那様の決心

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旦那様の決心

 旦那様は台所で眠ってしまっていたリオ達を見てからお部屋に戻り、一人で考えていた。  旦那様は奥様のおなかの中で亡くなってしまったのが女の子だと知って大層悲しんだが、家を継ぐための男の子が生まれなかったことも大層残念に思っていた。  この先子供は持てないと言う話も聞いていたし、旦那様には兄弟もいなかったので兄弟の子供に後をとらせることもできなかった。  旦那様には兄弟はいないが、従妹はいた。  従妹は旦那様には子供ができないことを知ってからと言うもの、何かとお屋敷に来ては自分の子供達を跡取りにしてもらおうと画策していた。何だったら養子にしてもらってもいいと思っていたし実際に旦那様に話も持ち掛けていた。  従妹には男の子も女の子もいて、すくすくと育っていた。  しかし旦那様は従妹の子供達は性根の曲がった悪い子供ばかりなのを知っていた。  大人の見えない所では、普段してはいけないと厳しく言われている火遊びをしたり、外にいる浮浪児の年下の子供をいじめたりと悪い事ばかりしているのだった。  従妹もそれに気づいているのに、自分の家が裕福なのをかさにきて、貧しい家の子供を自分の子供達がいじめようと一向に注意しようとしなかった。  食事のマナーも裕福な家の子供にしてはお行儀が悪く、『いただきます』も『ごちそうさま』もいえなかった。  食べ方もナイフやフォークをマナーどうりに使わないばかりか、ふざけてフォークで隣の兄弟の食べ物をつついたりいきなり手づかみで食べたりと体操大行儀が悪い。それなのに注意することもせずに、自由気ままに育てていた。  そういう所も旦那様は大変気になってしまい、何度か同じ食卓でお食事をしたのだったが、とても楽しい気分にはなれず、寧ろなぜ子供たちを叱らないのかと、言葉には出さないものの、従妹に対しては内心イライラしていた。  食卓を囲むたびにイライラして食事の味もわからないくらいだった。  こんなにお行儀の悪い子供だったらいっそ跡取りはなしで自分と奥様とで財産を使ってしまっても構わないとさえ思った。  または奥様のお友達で子だくさんのお家から養子を貰って育てようかとも考えていたが、それはまだ自分の子供を亡くして悲しみに暮れている奥様には話せないでいた。  でも旦那様の頭の中では今、目の前で疲れ果てて眠っている、みすぼらしい物乞いの男の子が気になって仕方がなかった。  もちろん、身分を考えれば跡取りになどできるはずもないのだが・・・ 『今日来た、みすぼらしいながらも妹を預かってくれと言ってきた男の子はどうだろう。自分だって、ひもじくてガリガリで、暖かい場所にいたいだろうに、仕事に行ってくる間妹を預かってほしいとは。』 『きっとまだ6歳くらいだろうか。』  リオも妹たちと負けず劣らずガリガリできちんと食べていなかったので年齢より幼く見えたらしい。 『性根は曲がっていない。物乞いをしなければいけないような大変な環境で育ったと見えるが、ちっとも曲がっていない。きっと最近亡くなったと言う親が立派な人だったのだろう。貧しくてもしっかりと愛情をこめて子供を育て、子供も自然にそれを見て育ったのだろう。』 『いっそどうだろうか。ボランティアで施しをするのだったら一遍に4人の子持ちになってしまっても悪くはないだろう。』 『ただ、周囲の眼もある。やはり身分違いという事で家の品格を疑われるし、養子はやはりまずいだろうか・・・・』  旦那様は今朝がたちょっと見ただけの小さすぎる4人の子供達がどうにも気になってならなかった。4人とも旦那様と奥様によく似た金髪と蒼い眼の持ち主だったからだ。  そして、一旦落ち着いて、養子の件は頭から追い払った。 『まずは小さい子供たちをリオが仕事をする間預かることにしよう。』 『それには、小綺麗にしてあげなくてはいけないし、預かるからには栄養にも気を付けてあげなければいけない。』 『そうだ。リオにこの家の仕事をさせればいいのだ。昼休みには一緒に食事がとれるし、小さい妹たちも心細くないだろう。』  そこまで考えると、まずは寝ているリオの元へそっと歩いて行って、隣のアネッサ、アニー、アンナを起さないようにそっとリオをゆすった。  
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