大きなお屋敷で働くことに

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大きなお屋敷で働くことに

 リオはお台所でそっと旦那様に揺り起こされた後、ドキドキしながらリビングに連れていかれた。  そして、旦那様に 「リオ、君はいくつなのかな?」  と、優しく聞いた。 「俺は7歳です。」 「そうか。リオ、これからは俺ではなく僕と言った方がいいな。私はリオにこのお屋敷で働いてほしいと思っている。それにふさわしい言葉遣いを覚えてもらわなければいけない。」 「それに7才だったら勉強も少し始めなければいけないね。働くのは午後からにして朝からお昼までは勉強を習いなさい。その方が仕事も早く覚えられるからね。」 「下の妹さん達はいくつなのかな?名前と一緒に教えてくれるかい?」 「5歳の妹がアネッサ。3歳の妹がアニー。1歳の妹がアンナです。」 「そうか。アネッサもまだ働くには早すぎるね。リオが勉強したり仕事をしている間、アネッサは妹たちと一緒にいてうちの奥様がメイドさん達と一緒に面倒を見るというのはどうかな?」  リオは驚いて旦那様に聞いた。 「旦那様、とてもありがたいお話ですけど、僕たち夜眠る家がないし、妹たちも着るものも持っていないので奥様にお預けするなんて・・・」 『汚くて申し訳ない・・・』という言葉は恥ずかしくて口にできなかった。  旦那様は優しく続けた。 「あぁ、言葉が足りなかったね。お屋敷で働くという事はこのお屋敷に住み込んで働いてもらうという事なんだ。だから、もちろん、君たち兄弟にも部屋を用意するよ。」  そこで、一旦言葉を区切り、にっこりと笑った。 「そして、これから住んでもらう部屋に入る前には、まずお風呂に入ってもらうことになるね。」 「着るものもお屋敷で働くのだからお屋敷の制服を渡すよ。妹さん達の分はきっとうちの奥様が買いたがるだろうから、心配はしなくてよろしい。働くのは来週の頭からにして、今週はお屋敷になれるように、お風呂に入ったり、お屋敷の中を案内したりしようね。」  リオはポカンとした。 「あの、僕はこのお屋敷で何をすればよいのでしょうか?それに勉強を教えていただけるなんて・・・」 「そうだね、勉強は知り合いの家庭教師を頼むよ。これは仕事を覚えるために必要なんだからお金の心配はしなくてよろしい。」 「仕事は私の執事に言っておくので執事の仕事について、勉強してくれ。」  旦那様はすぐに養子にするのではなく、執事として安心して任せられるようになれば、それから養子にするのに、社交的にも顔が知れているし、都合が良いと考えたのだ。もし、能力的に執事の仕事が難しいようなら農業の仕事を教えて、独立させてあげても良い。  とにかく、この兄妹を守ろうと強く考えてしまったのだった。  さぁ、それから2~3日は大騒ぎだった。  まず、子供が4人眠れる部屋を旦那様と奥様の隣の部屋にしつらえる。その最初の仕事として、4人とも奥様と旦那様付のお手伝いさんにお風呂に入れられてピカピカになり、新しい洋服を着せてもらった。    どの子も初めて入るだろう熱い湯に驚きはしたものの泣く元気もなく、メイドさん達になされるがままになっていた。その様子を見た奥様は、心を強く打たれ、嫌な時にはグズグズ言えるような子供らしい子供にしてあげなければ。と、驚くほどご自分を元気にさせた。    リオの執事見習いの服は、今までは大人になった執事の見習いしかいなかったので、子供でも執事見習に見えるように、白いワイシャツに黒のジャケットスーツ、ネクタイ、ソックス、革靴が準備された。  最初に着た日には、リオは多少、今までの服よりは窮屈な感じはしたが、こんな立派な服が制服として支給してもらえるなんて信じられない気持ちだった。  そして、元々の顔立ちがしっかりしていたリオは小柄ながらも立派な紳士に見えたのだった。  小さな妹たちには、奥様は、最初から生地の厚い装飾のついたドレスは慣れないだろうと考え、あまり華美にならない、着やすそうな柔らかいふんわりしたコットンで、妹たちの目の色と同じ蒼いドレスを選んでそれぞれのサイズに合わせてそれぞれ2枚ずつ仕立てさえた。そのほかには、薄いピンクに柔らかいフリルのついたドレスもそれぞれ2枚ずつ仕立てさせた。  みんな体に合った大きさだったので、ガリガリの身体もあまり目立たずとても可愛くなった。  髪もきれいに洗ってもらい、眼の色と同じドレスを着た妹たちはキラキラと輝く金髪を、長さに応じてリボンで結んでもらい巻き毛をクルクルと垂らしてその姿はとても愛らしかった。  ピンクのドレスも金髪にとてもよく映え、まだ多少悪い顔色も明るく見せてくれるのだった。  奥様は、まず、妹たちが気兼ねなくお屋敷で暮らせるようにいろいろと気を配ってくれた。  
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