大きなお屋敷のお庭で

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大きなお屋敷のお庭で

 寒い季節がようやく通り過ぎた。  リオが大きなお屋敷に勇気を出して妹たちの事をお願いに来なければ、この寒かった冬の間にきっと1歳のアンナは生き延びることができなかっただろう。  いや、3歳のアニーですら生き延びられるかどうかは分からなかった。    妹たちを預かってほしいというリオの妹たちを思う気持ちで大きなお屋敷の旦那様はその優しさに感銘を受け、兄妹は大きなお屋敷に住めることになった。  妹たちはすっかり奥様になついて、冬の寒い日々はリオ達に用意された部屋でたのしい時間を過ごした。  その中でもリオが一番に思い出に残っているのは、お屋敷で出されるごちそうで、本当においしい時間を過ごせたことだった。  最初のうちこそリオ、アネッサ、アニーの3人は普通の子供が食べる量の半分も食べられなかったが、旦那様や奥様がお台所のメイドさん達に消化が良くて、栄養価が高く、目にも楽しく、子供が食べたくなるものを考えて作ってほしいと頼んでくれたおかげで、段々と食欲も出てきて沢山のおいしい物を食べられたことだ。  旦那様と奥様の思いやりのおかげでおいしい時間をたくさん過ごせたことで3人は段々と普通の量の食事を食べられるようになった。  アンナはやはり極度の栄養失調に陥っていたので、奥様はお医者にアンナを観てもらい、食事についても相談した。  アンナはもう1歳を過ぎていたが、やはり食が細くてミルクもあまり飲めなかったので、お医者様は生まれたばかりの赤ちゃんにするように日に何度にも分けて温めたミルクを飲ませる事。その中で朝、昼、晩のお食事に当たる時間には野菜や、柔らかくしたお肉やお魚なども小さくして根気よく与えるように指示を出した。  そのおかげでアンナも暖かくなるころには大分食が進むようになって、みんなで大きなお屋敷のお庭で遊べるようになったのだ。  奥様は冬の間から、可愛い娘たちとお庭で遊ぶ計画を立てていた。  これまであまり気に留めていなかったお庭だが、実はとても腕の良い庭師がいて、季節ごとに綺麗な花を咲かせるようにお庭を作っていた。  奥様から、小さい子供を養子にしたのでお庭で遊べる場所が欲しいと、庭師がこの大きなお屋敷にお勤めしてから初めて奥様からの直接の要望を受けたのだった。  庭師は、はりきってお庭の日当たりの良い場所にあった花壇を移動して、お子様たちが安全に遊べるように柔らかな芝生を植えた広場を作った。その中にクローバーや、レンゲなども一緒に植えて、自分の娘たちがしていたように、お嬢様たちが花冠を作れるようにお庭をしつらえた。  いよいよ、お庭で遊べるようになると、奥様はお食事やおやつをお庭で食べられるように、作ってもらった芝生の一部にパラソルを付けた小さな食卓を用意した。  そして、暖かいお天気の良い日には外でお食事を楽しむことにしたのだ。  お庭で食べるお食事やおやつは3人の妹たちの食欲を増してくれた。  柔らかな良い草の匂いのするお庭だと、不思議にいつもよりたくさん食べる事が出来るし、アンナもお庭で動くと喉が渇くのか、ミルクや、フルーツのジュースをたくさん飲んでくれた。  アネッサがアンナと手をつないでアニーと鬼ごっこをしたり、元気に走り回れるほど、みんな元気になっていたのだ。  
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