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気持ちを告げる
始めての外での食事を終えて、ほてった顔で店を出た。
「燎さん、ありがとう」
「美味しかったな」
「うん」
「また行くか?」
「うん」
「どうした?……」
「燎さん、俺先生のこと好きだ」
「…………」
「なんか言ってよ」
「 一聖の気持ちは嬉しい、でも……」
「でもなに?俺の事嫌い?」
「嫌いじゃない」
「燎さんも俺の事好きだって思っていいの?」
「 一聖俺の部屋に行くか?」
「うん」
電車に乗って 一聖を自分のマンションへ連れていく。
私のマンションは施設を出て大学へ行く事と支援してくれた女性の条件をのむことで与えられた部屋だった。
中学高校と私の成績はいつも上位だった、それでも18歳になれば施設を出て住む場所も食べていく術も自分で何とかしなければ生きてはいけない。
いくら成績が良くても大学など夢でしかない……そんな時毎月ボランティアで施設を訪れる女性が私に言った。
「将来の夢は?」
「ありません」
「ほんとにないの?あなたは成績もいいし、真面目に学校へも行ってるようだし、もしあなたが大学へ行きたいと思ってるのなら援助します、その代わり将来の夢を描きなさい。私がかなえてあげます。次来た時にあなたの夢を聞かせて」
「はい」
本当だろうか?大学へ行って将来の自分の夢を叶える?それができるなら……自分の夢を描きたいと思った。
何かに期待することや希望を持つことはしたくなかった……どうせ叶わないそう思っていた。
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