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一聖の気持ち
高校卒業と同時に自分の住まいとなったマンション、鍵と一緒に送られてきた書類ではマンションの名義も私のものになっていた。
あれから12年私はそのマンションに住み続けている。
名前も知らない女性の支援……その恩を返したい、教会へ問い合わせても担当のシスターはすでに他界し彼女の名前を知る者はいなかった。
「 一聖入って」
「燎さん、凄いとこに住んでるんだね」
「そうだな……」
「俺燎さんと一緒に住みたい」
「何言ってんだ」
「だって……もう一人は嫌なんだ」
「ここに居ても私はめったに帰らない」
「それでもいいよ、俺料理も作れるし帰ってくるときメールくれたら美味しいもの作っとく」
「ダメだ…………お前は大学出てからどうするつもりなんだ?」
「…………どうって?」
「遊んでるつもりか?」
「そうじゃないけど…………」
「俺はお前を養う気はない」
「俺お金ならあるよ」
「お前の金か?大学出ても親の金で生きていくつもりなのか?」
「仕事するよ」
「だったら仕事が見つかったら来ていい、それまでは来るな」
「わかった…………」
いくら金銭的に恵まれていても、いい大人が遊んでいていいわけがない、それを 一聖にはわかってほしかった。
一緒に住むのはいい、寂しければ側にいてやりたいと思う、それでも 一聖には自分の道を見つけてほしいと思った。
一聖は我儘なようで言えばきちんと聞いてくれる素直なところがある、だからこそ親の金で遊んでほしくなかった。
好きだから一緒に居たいといった言葉を嬉しいと思う反面、彼に自分の帰りを待つだけの日々を送らせたくなかった。
コーヒーを飲んで 一聖を送って外へ出た。
「 一聖私がさっき言ってことわかるな?」
「うん、ちゃんと卒業して就職したら一緒に住んでくれるんでしょ?」
「あぁ約束する」
「俺絶対燎さんが褒めてくれるような仕事見つける」
「俺じゃなくて、自分のやりたい仕事を見つけるんだ」
「うん、わかってる」
「俺の帰りを待つだけのお前には興味はないからな」
「うん、わかった」
一聖をマンションまで送って自宅へ向かう…… 一聖のことが好きだと思う、だからと言って一緒に住んでいいのだろうか?
俺とはすべてが違う…………身内のいない自分は誰かに何かを言われることも、自分のすることに文句を言う人もいない、だが彼はそうじゃない…………
好きだと言われてもろ手を広げて彼を受け入れていいのだろうか?
一緒に住むことがどうゆう事なのか、あいつはわかっているのだろうか?
彼のように好きだという気持ちだけで突き進めない大人な自分が疎ましく思えた。
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