温かな日常

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温かな日常

同居が始まって2週間、一聖の仕事も始まった。 朝9時から6時までの定時の仕事だから、帰ったら食事の支度をして部屋の掃除などもきちんとやっている。 私の仕事は決まった時間に帰れない日が多い、そんな時は一聖は1人食事をして先に寝ている、深夜帰宅して急いでシャワーをして、ベッドに潜り込む。 これまでと違ってそこには温かな身体がある、身体を丸めて寝ている一聖。 そっと抱きしめると、その柔らかさにホッとする。 可愛い寝顔にキスをして、私も眠りにつく。 ずっと1人が気楽で良いと思っていたのに、待っている人がいることの幸せと、冷たい寝具に身を縮める事のない穏やかな優しさが嬉しい。 一聖は朝早く起きて食事を用意してくれる、私が仕事に出た後片付けをして洗濯をして仕事に行く。 一聖はこれまで、母親が亡くなった後は料理などの家事全般をお手伝いの人と一緒にやっていたと言っていた。 いつか一人暮らしをした時に困らないようにしていた事が役に立ったと嬉しそうな顔をした。 寂しい毎日でそんなことを考えていたのかと思うと、一聖の事が愛しくてたまらない。 スキー場で怪我人の救護をしたあの日一聖を見た瞬間に感じた胸の鼓動、これまで一度も感じたことのない衝撃だった。 理由もわからずただの動悸だろうと納得させて、病院へ搬送した。 その間ずっと私の手を離さなかった、いつもなら手を握り返すような事はしなかったはずなのに、あの時は何故か握りしめていた。 病院に到着して担当医に渡した後も気になっていた、だからといって尋ねる事はしたくなかった。 個人的な感情などを抱く事はこれまで一度もなくだからこそ今回の自分の事が我ながら不思議に思っていた。 もう2度と会う事はないと思っていたのに、看護師に言われて病室を訪れた私を彼は待っていたと嬉しそうな顔をした。 その顔を見たかった自分がいた。 あれから毎日のように病室を訪れ時間を過ごした。 いつの間にか、好きだと言う感情を自覚した・・・・・それでもまだ彼の事を一歩離れた目で見ていた。 彼の好きだと言う言葉をどこまで信じて良いのかわからなくて、鬱々とする自分。 彼の飾らない感情表現を素直に受け止めて、今自分はこれまでにない幸せを感じていた。 誰からも必要とされなかった自分を好きだといい待っていてくれる一聖。 私も掛け値なく全力で愛したいと思った。
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