フライトドクター成瀬 燎

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フライトドクター成瀬 燎

私は成瀬 燎(なるせりょう) 年齢30歳 フライトドクターになって2年、ドクターヘリの基地が設置されている東南総合病院(救急センター)に所属している救急医だ。 消防署からの要請があれば、フライトナース(看護師)と共にドクターヘリに搭乗し依頼があった現地へ急行、患者を搬送するだけではなく現地で、またはヘリの中である程度の治療まで行う。 救急治療を実施したあと、該当する専門科へ引き渡して私の仕事は終了となる。 出動の無い時間は、所属している救急科で救急医として搬送されてくる救急患者の診療にあたっている。 その日休憩室で遅い昼食を摂っていると、整形外科の看護師が私のところへ来た。 「成瀬先生!うちの患者さんが先生にお目にかかりたいとおっしゃってますが」 「私に?誰?」 「一ノ瀬 一聖(いちのせ かづと)さんでスキー場で開放骨折された方です、一週間ほど前緊急搬送されてます」 「一ノ瀬 一聖(いちのせ かづと)?」 「はい、先生にお礼が言いたいっておっしゃって……」 「わかった行ってみるよ」 「よろしくお願いします」 スキー場で骨折した患者を搬送したのは覚えているが、どんな患者だったのかよく覚えていなかった。 お礼を言いたいなどと言われたこともこれまでなかった。 とりあえず食事を済ませ整形外科病棟へ行く、ナースセンターで患者の病室を聞くとVIP患者用の特別病室となっていた。 大学生が特別病室?余程の金持ちか権力者の息子か?どっちにしても関わりたくない人種であると感じた。 病室のドアをたたくとすぐに中から返事があった。 「どうぞ」 「あぁー君か?私に何か用か?」 「先生にもう一度会いたくて……お礼も言いたかったし」 「礼なんて言わなくていい、仕事だ」 「……でも……」 「他になければ仕事に戻る」 「先生待って……また来てくれる?」 「私は整形外科じゃないから来る事はない、用があるなら親御さんに言え」 「……」 「私は個人的に患者と接することはしない」 冷たいと自分でもわかっているが、私はこれまで大学でも同じ職場の人間とも親しくなったことは一度もなかった。 親も兄弟もいない、天涯孤独の身で友人や仲間と親交を深めるという付き合いができないまま今日まで過ごして来た。 もちろんこれからも恋人だとか親友だとかを作る気は一切ない。 むしろ独りが気楽で仕事に集中でき、好きな時間に帰り食べて寝て休日をのんびり過ごす、誰に気を使うことも誰かを気にすることもなく過ごしたいと思っている。 彼一ノ瀬 一聖(いちのせ かづと)のような、恵まれた大学生など関わるのも嫌だと思っていた。 偶然にも一ノ瀬 一聖(いちのせ かづと)の生活状況を知るまでは……
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