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ガス爆発事故
病院へ到着するとすでに数台の救急車が到着し、院内は騒然としていた。
事故は印刷インキ用の樹脂を製造する4階建ての工場棟で発生し、工場棟1棟が全焼した。
当時、工場棟1階では製品の原料を粉砕して発生する粉じんを保管袋「フレコンバック」に詰める作業が行われていた。
粉じんが静電気による着火で激しい爆発を引き起こす、作業員の着衣などから生じた静電気によって爆発が起きていた。
爆傷には物理的外傷と心的外傷の両方が含まれ、物理的外傷には,骨折,呼吸障害,軟部組織および内臓の損傷,ショックを伴う内部および外部の失血,熱傷,感覚障害(鼓膜および内耳の損傷が聴力を障害する可能性などがある)。
患者の気道,呼吸,循環,身体障害(神経学的状態)および曝露(脱衣)に注意を払い、手の空いた医師が総動員で治療に当たった。
時間はすでに日付をまたぎ窓の外が明るくなっていた、病院へ到着してから他の事を考える時間はなく10数人の患者を必死で手当てした。
幸い死者はなかったものの重度の熱傷の患者がいて予断は許されない状態だった。
非常事態では勤務時間など無いも等しく、やっと一息ついたのは夕方になってからだった。
出勤してからすでに20時間………身体は限界に来ていた。
病院を後にして帰宅したがまだ一聖は帰っていなかった。
着ていたものを脱ぎ捨て寝室へ行くとベッドに倒れこむようにして眠った。
身体に何かが触れた気がして、目を閉じたまま手だけを動かす。
誰もいないはずなのに何かに触れた………探るように手を動かす、それが人間の身体だと認識したと同時に目を見開く。
「一聖………」
「燎!大丈夫?」
逢いたくてたまらなかった一聖の身体を抱きしめた………修羅場と化したあの場所から逃れるように帰宅した部屋、ここには愛する一聖が待っている。
「一聖逢いたかった」
「俺も」
「今何時だ?」
「夜の10時だよ、燎は何時に帰ったの?」
「夕方6時くらいだったかな………帰ってそのまま寝てしまった」
「疲れたんだね、お腹すいてない?」
「空いた………」
「一緒に食べよう」
「一聖もまだだったのか?」
「うん燎が起きるのを待ってた」
「そっか、食べようか」
一聖は2時間ほど前に帰宅して食事の支度を済ませ、私が起きるのを待っていた。
二人並んで食事をする、出来立ての温かな食事………贅沢な時間だった。
疲れた身体が生き返る、自分のために作られた美味しい食事………それがどれほど貴重か、自分が一番欲しかったものだった。
「一聖ありがとう」
「燎食べたらお風呂に入ってゆっくり休んで、昨日から寝てないんでしょ」
「あぁー」
「ニュース見たよ、大変だったね」
自分の欲しい言葉が降り注ぐ………優しく自分を包み込む言葉、一聖がそばにいてるれる幸せを実感した。
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