意外な来客

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意外な来客

モニターを確認すると中年の男性が立っていた。 「どちら様でしょう?」 「一ノ瀬と申します」 一ノ瀬? 嫌な予感がした……… すぐにロックを外し玄関のドアを開けて待つ、エレベータが開いて3人の男が歩いてきた。 中央にいる男性は背が高く気品に溢れ着ているスーツも上質だった。 「始めまして一ノ瀬一聖の父親です」 「成瀬 燎です」 部屋へ促すと2人の男は部屋へは入らず玄関の外で立っていた。 一聖の父親と名乗った男性はリビングへ入るとソファーに座った、対面に座り彼が話し出すのを待った。 「一聖と一緒に住んでいるのですか?」 「はい」 「どうゆう関係ですか?」 「………恋人です」 「恋人?男同士で?あなたは医者だとか………」 「そうです」 「何処で一聖と知り合いになったのですか?」 「一聖君が入院していた病院です」 「一聖が入院?いつですか?」 「はぁ?2ヶ月も入院していたのに知らなかったとおっしゃるんですか?」 「知りませんでした………いつ頃ですか?」 「3か月前に退院しましたよ、2か月の入院でした。どうりで見舞いにも来なかったんですね。息子の入院を知らないなんて………秘書の方が入院の手続きも退院時の支払いもしてましたが、何も報告はなかったんですか?」 「仕事以外の余計なことは言わないように言いつけていますから」 「余計な事?自分の息子の怪我が余計なことですか………あきれますね」 「息子はあのマンションからこちらへ来たんですね、悪いが息子との関係は終わりにしていただきます」 「勝手なことを言わないでください………もしかして一聖を連れて行ったんですか?」 「そうです、今実家にいます」 「一聖はなんと………」 「一聖の意見など関係ありません、私が決めたことに従わせるだけです」 「何をバカなこと仰てるんですか?一聖はもう子供じゃありません、あなたの許可も承認も必要ない!すぐに返してください」 「………無理です、あの子は私のたった一人の子供です」 「もう子供じゃないって言ってるじゃありませんか。これまでほっといていまさら何を………彼は今仕事もして自立しています。彼の気持ちを優先してください」 「彼のおかれた立場をあなたは理解してますか?   あの子は私の唯一の後継者です。  あなたなんかに渡せるわけがない」 「あなたこそ何もわかってないじゃないですか、彼がこれまでどれほど寂しい思いをしてきたか知ってますか?知ろうともしなかったんじゃないですか?だから入院したのを聞いても怪我をしたと聞いても平然としていられるんです。どこを怪我したのかどうゆう状態だったのかともあなたは聞かなかった………」 「わかりました!それではあの子の気持ちを聞きましょう、それで判断します。それでよろしいですか?」 「はい」 一聖の父親はそう言うと立ち上がった………本当に一聖に気持ちを確かめてくれるのだろうか? 一聖の気持ちは疑ってはいない………それでも…………不安でいっぱいだった。
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