もう一度好きだと言う

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もう一度好きだと言う

リビングのソファーに座ってずっと一聖の帰りを待った、今頃父親が一聖の話を聞いているはず………だったらもうすぐ帰って来る。 今頃は………そう思いながら時刻は夜の10時。 父親が帰ってすでに11時間が経過している、一聖の気持ちを聞いて判断すると言った。 一聖の判断は私の考えと違ったのだろうか? やっぱり肉親の願いが勝ったのだろうか? 信じていると言いながら不安が膨らんで、もう2度と逢えないような気さえしてくる。 スマートフォンを握り締めて1階まで下りていく、外に出て一聖の帰りを待った。 マンションの敷地の向こうに見える歩道から歩いてくる一聖を想像する……… 立ったりしゃがみ込んでみたり、スマホの画面を見たり………ポロポロと涙が頬を伝わり口の端からしょっぱい涙が口の中まで濡らしていく。 逢いたくて胸が苦しくなるほど切なくて………一聖の姿を探す迷子の子供のような自分。 これまで親を探したことも欲しいと思ったこともない、もともといない親なら探そうとも思わなかった。 でも一聖は違う…………自分の胸の中で眠っていた一聖は確実に存在した。 目の前にいて笑いかけて抱き着いてきた温かな身体を知っている。 しゃがみ込んで流れる涙を拭うこともなく歩道を見つめ続けた……… 冷たいタイルに座り震える身体を自分の両手で抱きしめる、もう動くことも立ち上がることも出来なかった……… 春とは言え夜風は冷たい、長い時間その場所に座り込むと、ウトウトと睡魔が襲う。 昨日から寝ていない身体を空腹と睡魔が波のように押し寄せきた。 眠ってしまった方が楽かもしれない・・・・・夢でもいいから、一聖に逢いたかった。 ぼんやりとした意識の中、誰かが自分の前に立った……… 目を眇めながらゆっくりと顔を上げた……… 視線の先に立っていたのは………《一聖》だった。 「 一聖(かづと)」掠れた声でそう呼んだ……… 「(りょう)」同じように涙声でそう言った……… 立ち上がることも出来ないくらい身体の力が抜けていた、座り込んだ一聖が抱き着いた。 嬉しいのと安心したのでまた涙が溢れ出す………「かづと」 何度も呼んだその名をもう一度顔を見て呼んでみる………「 一聖(かづと)」 夢でも幻でもない一聖がそこにいた。
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