雪よ。白く、染めて

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 その情事から二ヶ月後。  美しい新緑の頃、私の生理は止まった。  ……口の端がつり上がるのが、抑えられなかった。  私、妊娠したんだ。相手は矢上さん以外考えられない。 それを伝えると、あの朝以来ろくに目も合わせてくれなかった孝太郎さんがハッと顔を硬直させた。 「……そ、そうか。そんなことになったか……」  よろよろとふらつき、背後の壁に背を預ける彼。……そんなところがまた絵になる。イケメンっていいなぁ。  でも、なにをそんなにショックを受けるの?  よくあるロマンス漫画だと、そこは観念して私を愛するっていうふうになる場面じゃないの?  ……あ、分かった。これはただの演技だ。  本当は嬉しくてたまらないのに、そんなに顔を青くして私の気持ちをもてあそんで面白がっているんだ。  だって、孝太郎さんはきっと彼女とうまくいっていない筈なんだもの。我が儘で頭が悪い顔だけの彼女に手を焼いている頃合いですもの。  私は満面の笑みと、嬉しさに細かく震える声で。 「……責任、とってくださいね」  小さく、そう告げた。  それから数日後、私は彼からプロポーズを受けた。  精一杯の笑顔で、彼は言ってくれたのだ。 「結婚しよう。それが僕の責任の取り方だ」って。  私は嬉しさに涙ぐんで、思わずむせび泣いてしまった。  彼も、そんな私を見つめて泣きそうに目を潤ませていたけど……。  そこは、肩の一つも抱いてもらいたかったな。  この人がいれば――そしてお腹の子がいれば。  私の人生は、全てうまくいく。  さんざん私を馬鹿にしてきた友人たちを、見返せる。  さっそく、友人達に報告した。  あの矢上孝太郎さんと結婚することになったわよ、って。  ……しばらくは、LINEの返信の通知がうるさいくらいだった。  みんな驚いてる。まさか、あの花が結婚……、それも、イケメン上司の孝太郎さんだなんて。  うふふ。そうよ。私、孝太郎さんと結婚するの.彼の子供までお腹にいるの。  ねぇ、羨ましいでしょ?
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