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「蒼…何て言ったら…。…ありがとう…」
彼は掠れた声で何度も「ありがとう」と言って私の頭にキスを落とした。
「颯人さんも今まで私を支えてくれてありがとう。」
私も微笑んで彼を抱きしめた。そうして二人で喜びを噛みしめながらしばし抱き合った後、颯人さんはもう一度超音波の写真を見た。
「すごいな…。もう心拍が確認できるんだな。今度の検診はいつだ?俺も一緒に行きたい。」
彼はとても興奮しながら一枚目のエコー写真をじっと見つめた。そうしてもう一枚別にあるエコー写真に気付くと不思議そうに手に取った。
「なんだ?もう一枚撮ってくれたのか?」
颯人さんは初めの写真とは少し違う数字が書き込まれているエコー写真をじっと見つめた。私は自分でも病院で言われて信じられなかったことを彼に伝えた。
「えっと、それはもう一人の赤ちゃんです…。あの…双子妊娠しました…」
◇◇◇◇◇◇
それから約七ヶ月後、私は帝王切開で無事双子を出産した。一人は男の子でもう一人は女の子だ。
颯人さんは私のベッド脇にある椅子に座りながら娘の莉央をぎこちない手つきで抱いている。
「…可愛いな」
そう言って微笑むと腕の中にいる莉央を食い入るように見つめた。
私の腕には息子の玲央がいて、小さくて軽いのに抱いているとずしりとそれなりに重みがある。とても不思議な感覚だ。
「莉央、すごく颯人さんに似てる。見て!鼻とか口とかすごく似てるんですよ。」
私は颯人さんの腕の中で大人しく寝ている莉央と彼を見比べた。
「玲央は蒼に似てるな。一番最初に見た時大きな目で蒼にそっくりだって思った。」
私は微笑んで颯人さんを見た。目の前でとても幸せそうに莉央を抱いている彼を見ていると感動で目の前が涙で霞んでくる。
妊娠する前も卵巣の手術や、その後は不妊治療と大変だった。そしてなかなか子供ができず悩んだ時期もあった。
妊娠してからは11週目に出血し切迫流産になりかけてベッドに横たわっていなければならない時期もあった。
でも彼がいつもどんな時も側にいて私を支えてくれた。初めて会った時からいつだってそうだ。彼はどんな時も必ず私の側にいて支えてくれる。
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