プロローグ

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プロローグ

 桐生颯人(きりゅうはやと)は社長室からじっと窓の外を眺めていた。  これから雨が降るのか空がどんよりとしていてモヤモヤした彼の行き場のない欲望を表しているかのようだ。  颯人には最近なかなか手に入らないものがある。  自慢ではないがこれまでの人生で手に入らなかった物は一つもない。仕事も女も今まで自分の思うように手に入れ思う存分楽しんできた。  颯人の父修造(しゅうぞう)は桐生グループの会長で国内でも有数のIT事業を主に様々な事業を展開している。修造は祖父が立ち上げた小さなソフトウェア会社を一代でここまで大きな会社に成長させた。  長男である颯人の兄海斗(かいと)は父の後継者として現在桐生グループの親会社、KS IT Solutionsで修行をしながら社長補佐として働いている。  次男の颯人もしばらく兄と同じ会社で働いていたのだが、親の力を借りず自分の力を試したくて従兄弟の八神篤希(やがみあつき)と一緒にコンテンツなどを提供する制作会社を4年前に立ち上げた。  篤希と一緒に寝る間を削って必死に働き、会社は順調に大きくなり今では従業員300人ほど抱える企業に成長した。  颯人には自分で一度目標を立てるとそれにまっすぐ突き進む強い意志がある。これはおそらく親譲りの性格なのだろう。  欲しいと思ったものはどんな手を使ってでも必ず手に入れる。その為にはどんな努力も惜しまない。彼にはそれを実現できる実力とそして忍耐力がある。  そうして色々な事にチャレンジして自分の力を試し達成感を味わう。颯人はこうして自分の人生を楽しんできた。
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