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「縛ってお仕置きしてもいいですよ。」
彼はクククっと笑うと私の両腕を頭の上に置き彼の大きな左手で押さえつけた。
「今言ったこと後悔するなよ。」
彼はそう言うと私の上に覆いかぶさった。
この夜、私達はただ単に愛を確かめ合う為だけに何度も体を重ね合った。
── 三ヶ月後 ──
「ただいま」
「お帰りなさい」
夕食の準備をしていると颯人さんが帰ってきた。彼は荷物をその場にドサリと落とすと後ろからそっと私を抱きしめた。
「蒼…その…お医者さんはなんて…?」
彼は私の首筋に顔を埋めながら注意深く尋ねた。
実は今日産婦人科に行ったのだ。ここ数日下腹部に張りと少し痛みがあり、左側の腫瘍を残している卵巣に問題が起きたのではないかと産婦人科を訪れた。
「あのね、お医者さんがね……」
何とか微笑んで大切なことを伝えたいのに、涙が出てきてうまく伝えられない。それを見た颯人さんはおそらく最悪の事態を予想したのだろう。私をきつく抱きしめた。
「…大丈夫だ。俺がついてる。」
彼は何度も私の体をさすりながらそう言った。
「違うの…。そうじゃなくてね…」
私は颯人さんと向かい合うともう一度微笑んだ。
今日病院に行くと、まず尿検査をさせられた。そしてなんと妊娠反応が出た為、超音波検査をすることになった。すると妊娠7週目だった。
「私、妊娠してたんです…!」
「えっ……?」
颯人さんは呆然と私を見つめた。そんな彼に私は急いでキッチンのカウンターにおいていたエコー写真を見せた。
「まだ、初期だから流産する可能性もあるので安定期に入るまでは誰にも言わないでください。でも心拍も今日確認できました。最後の生理から数えて今日で妊娠7週と3日目です。」
私はエコーに写っている胎嚢の中にある小さな白い影を指差した。
「これが赤ちゃんです。」
颯人さんはじっとそれを信じられないようにしばし見つめた。そして彼は喜びで一気に笑顔になる。
「…蒼、よく頑張ったな…!」
彼は私をきつく抱きしめた。
「お義母さんに感謝しなければならないのかも。きっと妊娠したのはあのワインを飲みながら颯人さんと一緒にチェスをしたあの夜です。」
あの夜、私達は莉華子さんから頂いたワインがあまりにも美味しかったため同じワインを購入して飲みながら二人でチェスをしていた。
しかし私はすっかりお酒に弱くなったのか再び酔っ払ってしまい、チェスを放棄して彼に抱き付きながらキスのおねだりをした……までは覚えている。
その後は記憶が曖昧で、でもあの夜は何故かいつもより盛り上がってて、彼に何度も「もっとおねだりして」と囁かれながら執拗に抱かれたのを何となく覚えている。
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