藍染

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藍染

真っ白が大好きだ。 それを隙間なく塗りつぶすのが、私にとってのストレス発散方法。 たとえば、真っ白な画用紙を色鉛筆で塗りつぶしたり。 たとえば、水に絵の具を垂らしてその上に画用紙を落とし、一面に模様を付けてみたり。 真っ白がいろんな色に染まる瞬間が大好きだ。 そんな私に、母が藍染(あいぞめ)を教えてくれた。 「藍染?」 「そうよ。これが染料」 庭に敷いたブルーシートの上に、バケツいっぱいに、真っ黒に見える緑っぽい液体が用意されていた。 これは一体何だろう? バケツを覗き込んでいると、母が真っ白のシャツと輪ゴムを持って来た。 「これをどうするの?」 訳が分からないまま、差し出されたシャツと輪ゴムを受け取る。 シャツを染料に入れるだけなら、この輪ゴムはどうやって使うのだろう? 「輪ゴムでシャツを縛るのよ」 「……は?」 意味が分からず、間抜けな声を出してしまった。 「好きな場所を、好きなように縛るの。たとえばこんな感じに……」 母は自分の分のシャツをクシャクシャに丸めて、形が崩れないように大きめの輪ゴムで縛った。 「そうするとね、模様ができるのよ」 「……模様? どうやって?」 「輪ゴムで縛った部分は染まらないの。こうやってクシャッて丸めると、完全に染まり切らなかったりするのよね。一色でも、いろんな模様ができるものよ」 それはとてもワクワクする話だった。
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