先生と、三回目のヒート

1/3
446人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ

先生と、三回目のヒート

* * *  そして、秋日虎が生まれて二か月が経った十一月。  巽は南條手作りのハンバーグやポトフでささやかに誕生日を祝ってもらった。自分から欲しい物をリクエストし、ハムスターのぬいぐるみキーホルダーを買ったお店で、同じハムスターの絵柄がついたスマートフォンケースをプレゼントしてもらう。  ハムスターのぬいぐるみキーホルダーと狼のぬいぐるみキーホルダーは、失くしてはいけないと今は二人の寝室に仲良く飾られている。  巽は二十一歳になった。  やがて、十一月下旬が訪れる。ヒートがやってきた。  人生三回目のヒートも、一回目と二回目と同じく、病院で処方された抑制薬「オメアチアピン」を飲んで耐える。  一日目はなんとかしのぎ、二日目。  午後三時になろうかというころ。南條は家に籠っている巽を残し、一人で買い出しに出掛けることになった。秋日虎のおむつのストックが切れかかっていたのだ。 「ドラッグストアを回って、あと今日と明日のごはんの材料を買ってくる」  そう言って、出掛けていった。 * * *  南條が家を出て、十分後。  リビングダイニングのソファに腰を下ろし、暖房を入れカーテンを閉めて、動かなくてもいいようにする。巽はちらちらとそばに置いたベビーベッドの中を覗いた。  秋日虎がすやすやと眠っている。もちもちのほっぺが大福みたいで、こんなふうに大人しく眠っているときなどは、巽も「ほっぺ、吸いたい」などと思ったりする。可愛いという感情が少しだけ湧きはじめていた。  だが、不用意に触ってまた起きられてはと、「ほっぺ吸い」は実行しない。触れてみたりもしない。  そのままソファに両膝を立てて座る体勢を取り、スウェットパンツの上から股間を甘弄りしはじめる。   手のひら全体で包み、くにくに、と勃った性器を前後に擦る。  ビリビリと気持ちのいい電流が性器から背骨を通って脳天まで駆け抜けて、はぁ、と熱い息が漏れた。  それでも抑制薬が効いているからか、激しく扱こうという気には、まだならない。甘弄りで十分気持ちよく、それに、なんだか気持ちも落ち着いてくる。  要は、小さい男の子が不安なときにおちんちんを弄って落ち着きを得るのと同じ心理だ。  はふ、はふ、と息をこぼしながら、巽は軽く握って、しゅしゅしゅと手を動かす。ちらちらと我が子が眠るベッドを見る。秋日虎はまだ目を覚ましそうにない。 「ん、んん……」  口から自然に声が漏れる。欲情の籠った声だ。中指で裏筋を押しあげ、亀頭を包んできゅっと力を込めて握る。 「は、ぁ……」  おとがいを上げて、酸素を求めはくはくと口を開けた。目が虚ろだ。  そのまま、十五分は弄っていただろう。軽く達し続け、下着の中はぬちゃぬちゃのどろどろになっている。だが、まだスウェットパンツ越しに弄るだけだ。弄るたび、勃起したペニスが下着と擦れてくちゅくちゅと鳴っている。  そのとき、鼻腔に蜂蜜の香りが触れた。  振り返る。両手にエコバッグを提げ、南條がそこにいた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!