今は遠くても

2/5

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
オレは、祈るようにテレビを見つめる 陸上の日本代表に入ってるアイツ それも陸上の花形、リレーの選手だ アイツの頭には 赤いハチマキ 高校の頃からのトレードマークになった *━*━*━ オレは、将来デザイナーになりたい 高校で呑気に学生生活を送りたくない オレは、一日でも一秒でも早くデザイナーになりたい 本当なら被服科のある高校に進みたかったがうちの近所には そんな学校は、無かった だから家庭科の教師に直談判し 家庭科部…主に調理ばかりの家庭科部に所属し 学校の被服室を借りてデザインをしたりしている 「いくぞー!」 「「「おー!!」」」 校庭から聞こえる運動部のかけ声 「ドンマイ!!ドンマイ!!」 あっ… アイツだ どんな場所に居ても直ぐにわかる オレの好きなヤツ 辛くてもスランプでも一番明るい声を出すアイツが好きだ 被服室の扉がガラガラ音を立てて開く 「幸田君、先生が呼んでる」 調理部の部長がオレを呼びに来た 「んっ、わっーた」 もっと見たかったが職員室に向かう 「しつれーしまーす。家庭科のー」 「幸田君!!ココ!!ココ!!」 職員室の一角に赤と白の生地が置かれてる 「なんすか?コレ」 「幸田君、申し訳無いんだけど今度の運動会用のハチマキ縫ってくれない?」 「え?ハチマキ一から作るの?」 「うん、その方が安かったから」 「先生、ちゃんと何本取れるか計算…」 「幸田君にオールお任せって事で…」 各学年6クラス・40人240人 240×3学年=720÷2《紅白》=360 「足りる?先生…全クラス」 「あー、あー、ごめんごめん リレーと応援団分!!」 「良かった…ビックリしたわ」 「で、応援団長とリレーのアンカーは長いハチマキにして」 「了解」 こうしてオレは、ハチマキを作ることになった その間にもアイツは、校庭でリレーの練習に励んでる オレは、目に焼き付けるようにアイツを影からみてる いや、影から心で動画を撮るだな 「タイムー!!」 アイツの明るい声が響く 「あっち~」 って言いながらオレの目の前にある水飲み場に走ってくる 蛇口を下に向け頭から水をかぶる 頭をファサっと上げると 傾きかけた太陽がアイツを照らしてキラキラしてる 「うわっ」 つい声が出た 「あっ、ごめん!!はねた?」 水しぶきがかかったと思ったのか謝って来た 「あ、いや、大丈夫!!」 「あっ、幸田…だよね?」 え?オレの名前何で知ってるの? キョトンと顔を見つめてしまった 「え?あれ?幸田笑門(こうだえもん)じゃなかった?」 「あっ、うん。オレの事知ってるの?」 思わず聞いてみた 「知ってるよ、受験の時同じ面接だったし、世界に名を馳せるデザイナーになりたいってのが印象にあるよ」 …コイツよく覚えているな ビックリするわ 「オレも面接覚えているよ 陸上で世界一になりたい。だったよな」 「うん」 「なんかオレ達、同じような夢だな」 二人で笑った
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加