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「でも、かいとさん、生贄問題解決してくれたじゃないですか。おかげでもう心配することもなくなって、だから、もう元の世界に帰してあげようと思って、側を離れた隙に、ぱぱっと!」
「ぱぱっと! じゃねぇ」
「帰るのを見届けてよかったよかったと思ってたら、かいとさんが大事にしてたもんだいしゅうをわたしが持ってることに気づいて、慌てて自分をかいとさんの元に飛ばしたんです。以上、アコ物語でした~」
「なんだその締め方。腹立つな」
いろいろ気にくわない部分はあるものの、これでようやく謎が解けた。
つまり、俺はずっとこいつの失敗に振り回されていただけだったのだ。
改めてアコを見ると、やはりこっちではなかなか出会えないレベルの美しさだ。年は15歳くらいでやや子供ではあるものの、ちゃんと出るところは出ているし、磨けばさらに光るタイプだろう。
今手を出したら犯罪になるかもしれないが、あと数年待てば、ワンチャンあるかもしれない。
「……アコ、お前の転移のまじないは危険だ」
「はぁ」
「俺を戻すのだけは奇跡的に成功したようだが、このままお前がまた戻っても、元いた場所に戻れるとは限らない。どうだ、このままこっちの世界で俺と暮らしてみないか?」
「こっちの世界で、かいとさんと……?」
俺はアコの手を握りしめ、光をまき散らすような麗しい瞳をじっと見つめた。
「元々お前はあの村で、生贄にされようとしていただろう。向こうに戻れば、またいつどんな形で危険にさらされるかわからない。でもこっちの世界は安全だ。十分な食べ物もあるし、暮らしの快適さはお前の想像を絶するだろう。お前がこっちに留まるというのなら……、俺が、必ずお前を守ってやる」
俺の告白を、アコは目を丸くして聞いていた。
そして恥じらうように目を伏せ、口元に幸せそうな笑みを浮かべて――。
「いやですぅ~」
にこやかにそう言って、あっという間に姿を消してしまった。
いや、俺にもモテ展開をくれー!!
<終>
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