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休み時間になるや否や、俺のところに眞哉が歩み寄ってくる。
「お前よくあんなくだらない嘘思いついたな。ていうかアレを言う勇気を逆に尊敬するわ」
にやにやしながら話しかけられ、俺は少し腹が立った。
「うるさいな、ホントだって言ってるだろ」
「漫画の見すぎだって」
眞哉は小学校からの友人で、昔から二人であれこれ作り話を披露し合ってきた歴史がある。
例えば、親と喧嘩して家出して公園のブランコで暇をつぶしていたら宇宙人にさらわれた話とか、せっせと雪かきをしていたらいつの間にか金脈を掘り当てていた話とか。
だから、こいつが俺の言葉なんか信じないのも当たり前といえば当たり前。
「もういいよ、俺、職員室行ってくるから」
「え~、異世界の話聞かせてくれよ~」
完全にからかっている。こいつのこういうところが大嫌いだ。時と場合によるけど。
無視してさっさと教室を出たら、眞哉は後をついてきた。
「異世界って、あれ? 海翔がよく読んでる、死んだと思ったら転生してたやつ?」
めんどくさいから振り切ろうと早足で歩く俺に、小走りでついてくる。
地味な追いかけっこをしている謎の男子二人を、すれ違う生徒たちが不思議そうに見てくる。
「ねぇお前死んだの? トラックとぶつかった??」
「信じないやつには何も話したくない!」
「え、今回はそういうノリ?」
俺の新鮮な反応にワクワクしてる顔が憎い。
「だから、違うんだって。ほんとに行ってきたの!」
「わかってるって。だからその話聞かせてって言ってんの!」
「信じないやつには話したくないって言ってんの!」
「信じるって言ってんの!」
俺ははぁっとため息をついて足を止めた。
ちょっと先に出てしまって慌てて止まって振り返った眞哉を見据え、力強く宣言する。
「そんなに聞きたいなら話してやるよ。おとなしく放課後を待て!」
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