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先生に渡された数学の問題集を、添削済みの眞哉のものと一緒に鞄に詰めて、教室を出た。
ごりごりの帰宅部。
放課後の時間を有意義に使って何かしらの才能を育むことより、遊ぶことしか考えていない二人組だ。
「シェイク飲んでこ、シェイク」
眞哉は甘党だ。毎日のように摂取する砂糖をどう消費するつもりでいるのか、俺は密かに心配している。
「お前最近、顔丸くなってね? 運動もしないくせに甘いもの摂りすぎるなよ」
「はぁ? 別に変わってないだろ」
「本人にはわからないんだろ。写真撮ってやるから見てみろ」
俺はスマホを取り出して、カシャリと眞哉の間抜け面を撮った。
これだ。
これさえあれば、向こうで写真を撮ったり動画を撮ったりして、きっと何かしらの証拠にできたのに、なぜ異世界に行くときにこの文明の利器を置いていってしまったのだろう。
SNSに上げればそれこそ一躍スターになっていたに違いないのに。
人生最大の失敗だ。
ぐぬぬと悔しさをかみしめている俺を待ちきれなかったのか、眞哉が割り込んで画面を覗き込む。
「なんだよ、全然太ってないじゃん。お前がちょっと痩せただけじゃね?」
「え、俺痩せた?」
「うん、改めて見ると、心なしか」
それもそのはず。
俺が行っていた異世界は、大昔の日本のような、発展途上で貧しくてアワとかヒエとか、ウリの汁物なんかを食っている世界だった。
あんな質素な食事で数週間も過ごして、しかも体もそこそこ動かしていたのだから、痩せるに決まっている。
「そうだろう」
思わずドヤったが、眞哉は「?」の顔で見ていただけだった。
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